森安 史典, 佐野 隆友, 祖父尼 淳, 山田 幸太, 山田 昌彦, 今井 康晴

Fuminori MORIYASU, Takatomo SANO, Atsushi SOFUNI, Kota YAMADA, Masahiko YAMADA, Yasuharu IMAI

東京医科大学消化器内科

Department of Gastroenterology ＆ Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

マイクロバブル超音波造影剤は，肝がんにおいては病変の検出と鑑別診断に使われ，膵がんでは良悪性の鑑別診断に使われる．その診断には，肝臓にあっては，静注されたマイクロバブルが肝マクロファージ（Kupffer細胞）に貪食されることによって，いわゆるKupperイメージが得られ肝実質が長時間染影されることが利用される．また，肝がんや膵がんでは，静注後3分までのVascularイメージにより微細な腫瘍血管の描出が得られ，それにより腫瘍の良悪性の鑑別や悪性度などの組織性状を知ることが，その有用性の根拠である．
　肝がんの局所治療には，ラジオ波焼灼療法が用いられることが多い．その穿刺にはもっぱら超音波イメージガイドが用いられる．さらに近年では，造影超音波イメージガイド下に穿刺されることが多くなった．また，3次元的に正確な穿刺を行うためにリアルタイム3D（4D）イメージが，さらに比較的近い将来，造影4Dイメージが多く用いられるようになると思われる．
　また，穿刺に際しては術前に撮影したCTやMRI画像が肝がんの診断の根拠になっていることも多い．その場合に，超音波ガイド下穿刺に際して，CTやMRIの画像を参照することが必要となる．これらの参照画像と，リアルタイムの超音波断層像のreferenceあるいはfusionが行えることは，正確な穿刺治療には極めて重要となる．穿刺ガイドのみならず，焼灼中のモニターや焼灼効果の判定には，他の画像とreferenceの取れた超音波画像が診断の確信度を飛躍的に上げるのに有効である．
　近年，超音波治療，とくにがんに対する強力収束超音波（HIFU）が注目されている．肝がんや膵がんのHIFU治療は，針を穿刺することなくがん組織を焼灼できる治療法であり，代替治療のない膵がんには新しい治療法であり，また肝がんではラジオ波治療に替わるものとして期待されている．HIFU治療のガイドイメージとしては，MRIや超音波が用いられるが，呼吸性移動のある肝臓や膵臓では，リアルタイムの超音波がより有効である．HIFU治療の最大の欠点は，皮膚の熱傷を起こすHIFUエネルギーの閾値と，より深部のがんの有効治療のための閾値の差が少ないことである．このピットホールを解決するものとして，超音波造影剤であるマイクロバブルによるHIFU増強効果が注目されている．マイクロバブルがHIFUのcavitation nucleiとして働き，より低い音圧でcavitationが惹起されHIFUの熱効果を引き出すことができる．
　以上のように，肝がん，膵がんの診断と治療においては，超音波診断と治療技術の融合は，臨床的に重要なそして多様な局面を迎えていることが分かる．