Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム9
超音波診断と治療技術の融合

(S155)

早期乳癌に対するMRガイド下集束超音波手術

MR gudied Focused Ultrasound Surgery of Early Breast Cancer

古澤 秀実1, 志戸岡 純一2, 平原 恵美子1, 猪股 益子1, 緒方 真紀子2, 藤本 京子2, 伊藤 まゆみ1, 興梠 和子1, 中原 浩2, 安田 由紀子1, 町田 英一郎1, 前田 資雄1, 駒木 幹正1

Hidemi FURUSAWA1, Junnichi SHIDOOKA2, Emiko HIRABARA1, Masuko INOMATA1, Makiko OGATA2, Kyoko FUJIMOTO2, Mayumi ITO1, kazuko KOUROGI1, Hiroshi NAKAHARA2, Yukiko YASUDA1, Eiichiro MACHIDA1, Yorio MAEDA1, Kansei KOMAKI1

1ブレストピアなんば病院乳腺腫瘍外科, 2ブレストピアなんば病院放射線診断科

1Breast Surgical Oncology, Breastopia Namba Hospital, 2Diagnostic Radiology, Breastopia Namba Hospital

キーワード :

【背景】
乳癌に対する生物学的認識,特にリンパ節転移の意義に関するparadigm shiftが,乳房温存療法を標準的局所療法のひとつとしたことで,(radical)mastectomyが唯一の治療であった時代に比べて多くの乳癌患者に福音をもたらしてきた.このことは,局所療法の目的が「乳房内の癌細胞を残さず取りきること」にあり,さらには「乳房内に生きた癌細胞を残さないこと」に収斂していくことを示唆する.MRガイド下集束超音波手術(MRgFUS)は,リアルタイムMRIガイドに高密度超音波を用いて,乳房に何らの創も変形も来たすことなく,癌巣を熱凝固させようとする治療である.本治療の特徴は,治療の再現性と繰り返し治療が可能なことにある.
【目的】
本研究の目的は,MRgFUSによる早期乳癌に対する局所治療の効果と安全性を検証することである.
【対象と方法】
院内倫理委員会の承認を得て,すべての患者からinformed consentを取得.Non-randomized trial.第II相臨床試験(切除試験BC003):30例に対してMRgFUSを施行後に通常外科手術を行った.Primary endpoint:安全性と病理学的効果.第III相臨床試験(非切除試験BC004):これまでに36例(目標100例)に対してMRgFUSを施行後,CNBにてviable cancerのないことを確認して放射線照射(whole+boost)を行い経過観察.primary endpoint:安全性と局所再発率.
【結果と考察】
BC003:1例にIII°熱傷を経験した以外に重篤な有害事象はなかった.熱傷の原因は,腫瘍-皮膚間距離と使用エネルギー量によると考えられ,安全性向上のための治療器の改良が行われた.病理学的には超音波非照射部の癌巣は治療されていなかったものの,照射部においては体積として99%の治療効果を認めた.BC003:観察期間3〜48カ月(12カ月以上観察例27例)において,局所・遠隔再発,重篤な有害事象を認めていない.
【結論】
現段階では症例数が少なく観察期間も短いため性急な結論を出すことは憚られるが,今後のMRIの空間分解能とFUS deviceの性能の向上は約束されており,症例を厳選すればMRgFUSがLumpectomyと同等の局所治療効果(根治性)をもたらす可能性があり,局所治療のひとつのoptionとなりうる.