Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム8
経頭蓋超音波検査の最前線

(S152)

ソナゾイドを用いた経頭蓋超音波検査の可能性について

Transcranial contrast-enhanced ultrasonography with Sonazoid

斎藤 こずえ1, 平井 都始子2, 大石 元2, 上野 聡1

Kozue SAITO1, Toshiko HIRAI2, Hajime OHISHI2, Satoshi UENO1

1奈良県立医科大学神経内科, 2奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部

1Department of Neurology, Nara Medical University, 2Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University

キーワード :

超音波造影剤を用いた経頭蓋超音波検査での灌流画像解析による脳血流評価は,現在本邦では,高音圧で崩壊することにより造影効果を示すレボビストのみが認可されている.これに対して,欧米では既にいくつかの第2世代超音波造影剤が用いられているが,ようやく2007年本邦でも,肝領域でソナゾイドが認可された.ソナゾイドは,シェルをもち,生体内で安定し,また低音圧照射で共鳴により造影効果を示すため崩壊せず長時間造影効果が持続する.このため,血管領域においては,流速が遅い微小血管もリアルタイムに描出することができるなど従来の超音波造影剤では得られなかった画像が期待できる.また,ソナゾイドを高音圧照射で崩壊させ,その後再灌流する様子を観察する(Flash Replaenishment Imaging: FRI)手法で繰り返し流入する血流を評価することができることも本剤の特徴である.これらの特徴を生かして経頭蓋超音波に応用すると,投与後,主幹動脈に引き続いて脳実質内に流入する微細な血管の血流を描出することができる.キャプチャー機能を用いて積算画像を構成することで血管構築を再現することが可能で,側頭葉内の皮質に流入する皮質動脈や延髄の穿通枝なども描出することができる.脳梗塞では,梗塞内の血流が遮断され造影剤の流入がなく造影欠損として梗塞巣を評価することもできる.また,関心領域(Region of Interest: ROI)を設定し,造影後の時間輝度曲線:Time Intensity curve(TIC)をとることにより,局所の組織潅流を評価することが可能で,骨ウィンドウなど組織の音響学的な環境は個々に差があるため輝度値を絶対値として評価するのは困難であるが,同一断面で正常部と病変部や,アセタゾラミドなどの薬剤を負荷することで,負荷前後のTICを計測することにより脳血流低下や血管予備能など組織潅流の評価を行うことも可能となる.このソナゾイド造影による経頭蓋超音波検査法は,従来行われてきたMR angiographyや脳血管造影などによる血管描出法と,ラジオアイソトープにより行ってきた脳血流評価を同時かつリアルタイムに検査でき,さらに低侵襲で手軽に繰り返し,かつベッドサイドで施行することもできる画期的な手法であると考えられる.本手法が導入できれば,腫瘍や血管奇形などの脳実質微細血管の評価や,主幹動脈狭窄や閉塞,脳血管のスパスムによる脳血流障害の評価などが,可能になると考えられる.