Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム8
経頭蓋超音波検査の最前線

(S151)

CEA・CASの周術期における経頭蓋超音波検査

The role of transcranial Doppler ultrasound in carotid endarterectomy and carotid artery stenting

山上 宏

Hiroshi YAMAGAMI

神戸市立医療センター中央市民病院神経内科・脳卒中センター

Department of Neurology, Stroke Center, Kobe City Medical Center, General Hospital

キーワード :

頸動脈狭窄症は,虚血性脳血管障害の原因のひとつであり,その治療法として頸動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy: CEA)や頸動脈ステント留置術(carotid artery stenting: CAS)の有用性が示されている.
CEAもしくはCASの周術期管理で特に注意すべき合併症として,過灌流症候群があげられる.過灌流症候群は発生頻度こそ高くはないものの,ひとたび頭蓋内出血を生じれば致命的合併症となりうるため,その管理には慎重を要する.経頭蓋超音波ドプラ法(transcranial Doppler ultrasound: TCD)による中大脳動脈(middle cerebral artery: MCA)流速の計測はきわめて有用なモニタリング法であり,治療側MCAの最大血流速度が術前に比して2倍以上に上昇して持続する場合は,過灌流症候群を発症する危険性が高い.このような場合は降圧薬による厳密な血圧管理と鎮静あるいは全身麻酔を数日間継続し,脳出血発症を予防する必要がある.また,経頭蓋カラードプラを用いてもMCAの平均血流速度が術前の1.5倍を超えた場合には,過灌流症候群を呈することが多く,これらのモニタリングは術後の血圧管理にも有用である.
頸動脈血行再建術におけるもうひとつの注意すべき合併症は,術中の遠位塞栓症または血行遮断による虚血である.遠位塞栓については,TCDを用いた微小塞栓信号(micro embolic signal: MES)の観察が有用であるが,CASにおいてフィルター型の遠位塞栓防止器材を用いた場合には微小空気によるMESが多く発生するため,有用性が低い.術中のMCA流速の計測は,血行遮断による脳循環動態のリアルタイムな把握が可能であり,CEA術中の90%以上の血流低下は虚血性脳血管障害発症に関連する.
以上の点を中心に,CEAとCASの周術期モニタリングとしてのTCDの有用性を,過去の報告と自験例を元に述べる.