Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム7
経直腸的超音波断層法の将来を考える −診断からインターベンション・治療への応用−

(S149)

HIFU:治療学からみたTRUSの進歩

HIFU:Clinical outocome and TRUS

内田 豊昭

Toyoaki UCHIDA

東海大学医学部付属八王子病院泌尿器科

Urology, Tokai University Hachioji Hospital

キーワード :

目的: HIFUは,100ワット/cm2以上の強力な超音波を虫眼鏡のように凹面のプローブから焦点に集まるように照射し,焦点領域温度を100度近くまで熱することにより治療する方法である.臨床に応用開始してから約16年経過し,現在のHIFU機器は第5世代を使用している.これまでのHIFU機器の進歩について報告する.
対象と方法:対象は,前立腺肥大症とstageT1-3N0M0の限局性前立腺癌で,治療には1993-1999年は第1世代のソナブレート (S) を前立腺肥大症に,1999年からは前立腺癌を主なターゲットとして1999-2001年は第2世代のソナブレート (Focus Surgery, IN, USA) 200 (S200),2001-2005年は第3世代のソナブレート500 (S500),2005-2008年まで第4世代のソナブレート500 ver. 4 (V4),2008年からは第5世代に相当するソナブレート 500 ver.5 (V5) の5種類を用いてきた.経直腸的プローブは,中心部分が画像診断,外側周囲部分が治療用となっている.画像診断用と治療用の超音波周波数はともに4 MHzで,プローブの焦点距離の違いにより,3.0 cmは1680 ワット/cm2,焦点距離 4.0 cmは1300ワット/cm2の照射強度に設定されている.
治療方法は腰椎麻酔下に,プローブを肛門から挿入する.プローブから発射されたHIFUは,3x3x12mmの小さな焦点領域を80-98度まで上昇するように設定され,コンピューターコントロール下にこの小さな領域が600-2,000個少しずつ重なるように移動,最終的に前立腺全体を照射し治療する.
結果:各世代別機器の改良点は,第1世代の1焦点領域の大きさは,2x2x10mmであったが,第2世代からは3x3x12mmと拡大した.カラードプラーが第3世代から付属され,術前に両側の神経血管束を同定し,かつ同部を照射領域から除外することにより,術後の勃起不全を防止することが可能となった.第4世代から3次元画像装置と治療中に照射領域を追加あるいは削除できるSTACKシステムが追加された.また第5世代には,治療中の焦点領域温度を示すTissue Change Monitor (TCM)システムが追加された.これは,焦点領域の温度が,90度以上(橙色),65-90度(黄色),48-65度以下(緑)と3種類に色分けすることにより照射強度を適時変更することができるようにしたものである.1999年1月から,892例の限局性前立腺癌に対してHIFU治療を施行した.このうち,HIFU療法後1年以上経過した633例について各機器別に集計した.S200 (32例)の平均手術時間は174分,S500 (407例)は123分,V4 (224例) は68分と,手術時間は有意に短縮した(p<0.0001).S200群(32例)の5年生化学的非再発率は56%,S500群(407例)は53%,V4群 (224例) は83% (3年目)とV4群が有意に上昇した(p=0.0008).ちなみに,V4群のリスク群別3年目生化学的非再発率は,低リスク群95%,中リスク群88%,高リスク群 65%(p=0.0003)であった.
結論:HIFU療法は,身体に傷をつけずに治療し,かつ高い臨床効果と患者のQOL向上が期待できる治療法である.今後も機器の改良に伴ってさらに発展していくと思われる.