Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム7
経直腸的超音波断層法の将来を考える −診断からインターベンション・治療への応用−

(S148)

ホルミウムレーザー前立腺核出術時のリアルタイムTRUSの有用性

Usefulness of real-time transrectal ultrasound navigation during holmium laser enucleation of the prostate

柴田 康博

Yasuhiro SHIBATA

群馬大学医学部附属病院・泌尿器科

Urology, Gunma University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)は前立腺肥大症に対する新たな低侵襲手術として,TUR-Pや開腹手術に代わる有用な術式であるが,剥離層や剥離方向が適切でないと思わぬ出血を来たし,失禁等の合併症も増加する.特に新規にHoLEPの導入を検討する際には,新しい術式であるが故に熟練した指導者が不在のことが多く,導入をためらうこともある.HoLEPの施行に際しては,いかにオリエンテーションを失わずに適切な剥離層および剥離方向で核出操作を行えるかが重用である.この際に操作の補助となる指標があれば被膜穿孔等の不本意な合併症を避けられ,安全かつ的確な手術が可能となる.我々の施設では,導入当初よりリアルタイムTRUSモニター下に HoLEPを行いその有用性を検討している.
【対象と方法】
内視鏡用モニターと超音波画像モニターを患者の左側に並列に置き,常に術者により視認可能とした.経直腸超音波プローブの操作は患者の右側より助手が行った.助手は常に内視鏡操作部を描出し,縦断像を基本として適宜横断像へと切りかえ,適切な剥離層および剥離方向へと誘導した.また,モルセレーション時には経腹的超音波で膀胱内をモニターして,核出腺腫への内視鏡誘導,膀胱損傷の予防に利用した.
【結果と考察】
リアルタイムTRUSモニターにより,HoLEP施行時に問題となると思われるポイントである1.開始時,精阜部での正しい剥離層の同定,2.腺腫尖部方向での適切な粘膜切開部の同定,3.膀胱頚部6時方向での正しい剥離方向の誘導,4.癒着部や小結節状腺腫存在部など剥離層が不明確な部位での正しい剥離方向の誘導,などにおいて良好な指標が得られ,安全な手術操作に有用であった.またモルセレーション時の経腹超音波モニターにより,術視野が不良なときでも腺腫の吸着が容易となり,内視鏡と膀胱壁の位置関係を確認することにより膀胱損傷の予防に大変有用であった.当施設では,本抄録記載時までに65例のHoLEPを施行し,ほぼ全例でリアルタイムTRUSモニターを用いた.症例の年齢は56-86歳(平均72.3歳)で,推定前立腺体積は17-102ml(平均52.2ml)であった.核出重量は3-133グラム (平均36.5グラム)で,手術時間は40-290分(平均128分)であった.術前後の排尿パラメターの平均値は,IPSS 22.3→3.5,QOL 5.3→1.5,最大尿流量 4.9→15.5 ml/秒,残尿 149.6→7.3 mlと改善良好であった.術後尿失禁は遠位側の粘膜切開時期の工夫により著明に減少している.
【結論】
リアルタイムTRUSモニター下でのHoLEPは,特殊な器材を必要とせず,本術式を安全に施行するために有用であると考えられた.