Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム7
経直腸的超音波断層法の将来を考える −診断からインターベンション・治療への応用−

(S147)

前立腺癌密封小線源療法におけるTRUSの役割

The role of transrectal ultrasonography for the treatment of prostate carcinoma by using Iodine-125 seed implantation.

三木 健太

Kenta MIKI

東京慈恵会医科大学泌尿器科

Urology, Jikei University

キーワード :

近年,PSAの普及により早期に診断されるいわゆる限局性前立腺癌患者が増加している.限局性前立腺癌に対する治療法は全摘手術,放射線療法,内分泌療法,待機療法に大きく分類される.このような多くの選択肢は患者のニーズに対応できるという利点はあるものの,実際にどの治療法が最も適しているかわからず混乱する場合もある.一般的な情報から患者自身が自分に最適な治療法を選択することは容易ではなく,結局,最終的には担当医からの納得できる説明によりどれかを選択しているのが現状である.
多くの泌尿器科医はこのような状況のなかでそれぞれの治療法における高い治癒率だけでなく,治療後のQOL維持を目標に努力している.特に前立腺癌の治療にはその解剖学的特徴から排尿,排便などに関する合併症が発生しやすく,また,その生理学的特徴から性機能に関する障害も起こりうるので,QOLとはいってもその評価項目は多彩である.
今回のテーマである密封小線源治療は放射線治療のひとつで,前立腺の内部にヨウ素125と呼ばれるシード線源を直接挿入し,永久留置する治療である.この治療法の歴史は古く,最初は患者の下腹部を切開し,盲目的に前立腺に向けて線源を直接埋め込む方法で行われていた(図).しかし,治癒率が低く合併症が多いことより一時的に衰退していた.その後,1983年Holmらにより経直腸超音波装置(TRUS)を用いてリアルタイムでその画像をガイドに線源を挿入するという画期的な方法(図)に改良され高い治癒率と低い合併症発生率を経験し,現在に至っている.
TRUSは前立腺の形態を把握するうえでは大変簡便で優れた補助診断ツールであることは言うまでもないが,密封小線源治療の実際の治療場面では施術の中心的な役割を担っている.TRUSの前立腺横断像と矢状断像を随時確認し,前立腺,尿道,膀胱,直腸,精嚢などの解剖学的関係を十分に理解しその形態を把握しながら前立腺被膜ぎりぎりに針を挿入し,線源を留置する.本治療法の治癒率と尿道や直腸への合併症発生率は,線源留置の正確さで変化するといわれる.質の高い小線源治療には,より多くの線量ができるだけ正確に前立腺に照射され,周囲臓器への照射を減らせるような技術が求められている.このセッションでは本治療法におけるTRUSの具体的な役割について画像を用いて紹介したい.