Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム7
経直腸的超音波断層法の将来を考える −診断からインターベンション・治療への応用−

(S147)

Real-time Virtual Sonographyを用いた前立腺生検の成績

Usefulness of Real-time Virtual Sonography for prostate targeted biopsy

宮川 友明1, 石川 悟2, 木村 友和2, 末富 崇弘2, 堤 雅一2, 入江 敏之3, 近藤 正尚4, 荒井 修4, 三竹 毅4

Tomoaki MIYAGAWA1, Satoru ISHIKAWA2, Tomokazu KIMURA2, Takahiro SUETOMI2, Masakazu TSUTSUMI2, Toshiyuki IRIE3, Masanao KONDOU4, Osamu ARAI4, Tsuyoshi MITAKE4

1北茨城市立総合病院泌尿器科, 2日立総合病院泌尿器科, 3日立総合病院放射線科, 4㈱日立メディコUSシステム本部

1Department of Urology, Kitaibaraki Municipal General Hospital, 2Department of Urology, Hitachi General Hospital, 3Department of Radiology, Hitachi General Hospital, 4Ultrasound Systems Division, Hitachi Medical Corporation

キーワード :

【目的】
前立腺癌の画像診断として絶対的な方法は現在なく,確定診断には前立腺生検が必須である.核磁気共鳴画像(MRI)は比較的感度が高いが,前立腺生検にリアルタイムに使用することは現状では困難である.実際の前立腺生検は経直腸超音波(TRUS)下に施行することが多いが,MRIで癌を疑う病変がTRUSでは確認できないこともあり,このような部位を正確に生検するのは比較的難しい.われわれは2007年より肝臓領域で使用されているReal-time virtual sonography(RVS)を用い,MRI画像とTRUSをリアルタイムに一致させ目的部位の狙撃生検を施行している.その成績と有用性について報告する.*Real-time virtual sonographyは㈱日立メディコの登録商標です.
【対象と方法】
2007年2月〜2008年9月の期間に,過去1回以上前立腺生検陰性の既往があり,その後MRIを施行し癌を疑う所見を認めた51例を対象とした.MRIは,T2強調画像,拡散強調画像,造影法を施行し,癌が疑われる部位をT2強調画像横断面で参照しマーキングを行いMulti Planar Reconstruction(MPR)画像を作成した.前立腺生検は,腰椎麻酔下に砕石位にて施行した.ランダム生検は経直腸的生検8カ所,経会陰生検4カ所の,計12か所を基本とした.RVSを使用した狙撃生検(RVS生検)は,日立メディコ社製U533プローブを用いた経会陰生検を施行時に,位置情報の感知のための磁気センサーを患者の体幹付近に置き,MRI T2強調画像矢状断面と経直腸超音波矢状断画像を,内尿道口を基準点として一致させ,MRIで所見のある部位を1-2カ所施行した.
【結果】
対象患者51例の年齢は中央値69歳(56−84),PSA値は中央値10.6ng/ml(5.3-28.5),前立腺体積は中央値38.8ml(17.7-141),生検施行回数は2回目29例,3回目以上22例であった.前立腺癌は26例(52%)に検出された.癌検出患者ではRVS生検が22例(88%)で陽性であり,うち13例はRVS生検のみ陽性であった.陽性コア数ではRVS生検は陽性率44%(23/52)であり,通常のTRUS下ランダム生検(3%:9/261)と比べ有意に陽性率が高かった(P<0.01).RVS生検陰性で,他部位が陽性であった症例は3例認められた.5例でRVS生検施行中にMPR画像にずれが生じた.
【結語】
2回目以降の再生検での前立腺癌陽性率は,30%以下の報告が多い.今回の検討では癌陽性率が52%となり,RVSを使用することによりMRIで疑われる病変部位を正確に生検できていることが示唆された.MRI横断面画像から,矢状断画像へのマーキングが可能となり,設定可能マーカー数が増加し複数のターゲットにも対応できるようにソフトが改良され,またプローベの位置精度も向上し画像のずれなどの不具合は改善されてきている.多部位生検が必要なく,RVSは現時点では初回生検陰性で,MRI陽性患者に対する前立腺狙撃生検への有用性が高いと考えられた.対象症例の拡大についての検討も今後必要になると考えられる.