Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム7
経直腸的超音波断層法の将来を考える −診断からインターベンション・治療への応用−

(S146)

ドプラ下前立腺針生検の有用性と限界

Power Doppler ultrasound-guided prostate biopsy in the diagnosis of prostate cancer - Validity and limitations in the era of extended biopsy -

木村 剛

Go KIMURA

日本医科大学泌尿器科

Urology, Nippon Medical School

キーワード :

【目的】
前立腺は小骨盤腔内の奥深く,膀胱底,尿生殖隔膜,恥骨結合と直腸に囲まれた位置に存在する小器官である.前立腺自体が小さく,かつ,その解剖学的位置関係より,前立腺内外を詳細に描出し,前立腺疾患を画像から鑑別診断することは長い間困難であった.その問題を解決するために,超音波断層法においては,直腸内トランスデューサーが開発され,経直腸的超音波断層法(transrectal ultrasonography: TRUS)として広く用いられるようになった.さらに,近年,体腔内トランスデューサーの周波数は,前立腺内を観察するのに適したレベルにまで高められ,結果,画質が飛躍的に向上した.一方,B-mode表示と血流表示が同時に可能なcolor Doppler ultrasound(CDU)が開発され,さらに,CDUの弱点だった角度依存性を少なくし,エリアシングによる色の反転,シグナル/ノイズ比を改善した超音波パワードプラ法(power Doppler ultrasound: PDU)が普及するようになり,低流速の微細な血流まで描出可能となった.そのため,PDU法は,B-mode像と比較し,前立腺癌診断における正診率の向上をもたらし,診断のみならず,前立腺生検(確定診断)における系統的生検部以外の癌疑い部を生検する「標的生検」の補助機器として利用されてきた.しかし,近年,生検法は従来の標準であった系統的6箇所生検から多数箇所生検に移行し,標的生検の意義が少なくなった感がある.そこで,当科において1998年から継続して行っているPDU下標的生検の陽性率(PDUの感度)が系統的生検の穿刺部位数の増加とともに実際にどのように変化したかを報告する.
【方法】
1998年から2007年までに生検を行った2278例を対象とした.系統的生検の穿刺部位数は.A群:1998−2002年6カ所, B群:2003年8-12カ所,C群:2004−2005年12カ所,D群:2006-2007年14カ所で,標的生検の陽性率と,PSAや系統的生検の穿刺部位数の増加との関連を検討した.
【結果】
全癌陽性率は2278例中1158例(51%)であった.そのうち標的生検陽性例は901例(78%)であった.PSA別に見た標的生検陽性率(%T+)は,PSA 0-4,4-10,10-20,>20で,58,64,81,97%と,PSA値の増加と相関していた.次に,A-D群において,%T+を比較すると,A,B,C,D群で,それぞれ,85,86,81,65%で,生検部位数の増加とともに低下傾向を示した.
【結語】
系統的生検の穿刺部位数が増加するほどPDU下標的生検を行う意義は少なくなることが示唆された.