Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム6
乳房超音波検査における腫瘤像非形成性疾患

(S144)

腫瘤像として認識困難な病変の超音波診断

Ultrasonography of non mass image forming lesions

神谷 久美子

Kumiko KAMITANI

北九州市立医療センター臨床検査科

Deparment of Clinical Laboratory, Kitakyushu Municipal Hospital

キーワード :

I. はじめに
乳癌にははっきりとした腫瘤を形成するものの他に,はっきりとした腫瘤を形成しないタイプのものもある.こうした病変は超音波検査でもはっきりとした腫瘤像としては認識困難であるため,知っておかなければ見落とされる恐れがある.JABTSのガイドラインでもこうした病変を腫瘤像非形成性病変と定義し,乳管の拡張,低エコー域,多発小嚢胞像,構築の乱れといった腫瘤像以外の所見も病変として認識するように提唱されている.腫瘤像形成性病変であろうと腫瘤像非形成病変であろうとその所見を形成している背景の組織学的所見を推定しながら考えられる鑑別診断を挙げていくというプロセスには変わりはない.
II. 鑑別診断
 乳管の拡張は内部に充実性成分があるときのみ有意な所見であり,DCISとpapillomaが鑑別に挙がる.低エコー域は主として2種類の組織像がイメージされる.一つは乳管を拡張させて内部に細胞が増殖している像,もう一つは浸潤性小葉癌(ILC)のような周囲組織に細胞がパラパラと浸潤性に発育する像である.腫瘤像非形成性病変の中では,この所見が一番幅広く,鑑別もDCISや各種の乳腺症,fibrous disease,ILCなどと幅広く挙がる.多発小嚢胞像は乳腺症のことが多く,DCISであることは稀であるが,区域性や局所的である際には,low papillary typeなどのDCISや,mucocele like tumor (MLT)に合併したDCISの可能性がある.構築の乱れは,低エコー域に伴って見られることもある.radial scarやradial complex lesion,sclerosing adenosisなどで見られることがあるが,これらの良性病変はDCISを合併していることも少なくない.また,ILCで見られることもある.これらの所見を検出する際,私は一定の乳腺の流れを認識しやすい放射状走査を好んで行っている.
 1. 管内病変を主体とする疾患:DCISあるいは微小浸潤癌,papilloma,ductal hyperplasia (DH),2. Fibrocystic change (Adenosis, fibrosis, DHなどのいわゆる乳腺症),fibrous disease,3. ILC,4. Radial scar,5. MLTについて,これらの病変の組織像とそれに対応する超音波所見を理解することが重要である.
III. 腫瘤像として認識困難な病変に対する超音波検査の役割
 まずは何と言っても病変の検出につきる.石灰化を生じたものはマンモグラフィ(MMG)での検出率が高いが,石灰化のないものに関しては腫瘤像形成性病変に比較してMMGでの検出率は一般的に低い.また,MMGで石灰化のみが指摘された病変でも,超音波では腫瘤や低エコー域などの石灰化以外の所見を描出できることも多く,鑑別の一助となる.さらに,次のステップに進む際,組織像を考慮し鑑別診断を絞った上で,次にどう進めばその鑑別がしやすいか示唆していくことも超音波検査の重要な役割と考える.