Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム5
超音波併用乳房検診の有用性,現状と課題

(S139)

千葉県における超音波併用乳がん検診のシステム

Breast Cancer Screening Program in Chiba

橋本 秀行

Hideyuki HASHIMOTO

ちば県民保健予防財団総合健診センター乳腺科

Breast Clinic, Chiba Foundation for Health Promotion and Disease Prevention

キーワード :

【はじめに】
我が国では,乳がん患者が増加しており,死亡率も年々上昇しているのが現状である.そのため,早期発見・早期治療を目指した質の高い乳がん検診が望まれている.平成12年より50歳以上の女性に対し,マンモグラフィ検診が導入され,平成16年にはその対象が40歳以上に引き下げられた.欧米に比べ日本人の乳がん罹患率は,若年傾向にあり,その年代のマンモグラフィでは,高濃度(dense)のことが多く,乳がんであっても検出できない症例をしばしば経験する.そこで,年齢に影響されず,乳がんを検出できるmodalityとして超音波検査が注目され,現在,乳がん検診に導入されつつある.
【千葉県の現状】
千葉県では,できるだけ多くの乳癌を発見する目的で平成16年に『千葉県乳がん検診ガイドライン』を作成した.その内容は,マンモグラフィ検診で検出できない乳がんを超音波検査で発見できるように,40歳代の乳がん検診にはマンモグラフィと超音波検査の併用,30歳代は超音波単独検診となっている.厚生労働省(厚労省)の通達による方法では,隔年にマンモグラフィ(二方向)であるが,千葉県では,この方法に超音波検査を追加し,隔年の間に超音波検診を行っている.この方法により,40歳代は逐年にマンモグラフィと超音波検査の交互検診となり,マンモグラフィで検出できない症例を超音波検査で検出できる可能性が高くなっている.ただ,超音波検診による死亡率減少効果は証明できていないため,千葉県内の各自治体(各自治体の乳がん検診委員会や予算を検討する議会等)で検討してもらい,施行しているのが現状である.あくまでも各自治体の判断によって施行している.平成19年度,千葉県内56市町村中,42市町村(75.0%)で超音波検診を実施している.
【検診方法】
1.使用装置
千葉県内の多くの乳がん検診は,移動式(検診車に装置を搭載)で行っている.超音波検診車には,2台の超音波診断装置を搭載し,一年を通じて検診を行っている.使用装置は,Aloka SSD-1000 MHz アニュラレイ探触子である.
2.検診実施者
超音波検査の走査は,超音波検査技師が行い,読影は,医師が行っている.検査を担当する技師は,乳房超音波検査に習熟した技師とし,具体的には日本超音波医学会認定検査士の資格を取得し,日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)が主催する乳房超音波講習会を受講し,合格した者である.
3.走査方法と記録方法
全乳房の二方向走査が基本である.通常は,縦方向走査と横方向走査をしているが,必要に応じて放射状走査やその垂直方向の走査を追加している.
所見のある症例には,最大径の断面,最大径に直交する断面,乳頭と病変を結ぶ断面をDICOMデータとサーマルプリンタによる記録を行っている.画像は必要に応じて腫瘤の特徴を現している断面も追加している.
4.精査基準
検診の要精査基準は,腫瘤像形成性病変,腫瘤像非形成性病変ともに日本乳腺甲状腺超音波診断会議編「乳房超音波診断ガイドライン」による.カテゴリー3以上を要精査としている.
5.読影方法
読影は前述した医師と走査した技師との2名で行っている.超音波検査の基本はリアルタイム診断である.その画像を撮像した状況や背景を再度,確認することができ,不要な精査症例を増やさずに済む.
検診とは,どんなに効率よく,良い方法で行っていても,精度管理ができていなければ何にもならない.シンポジウムでは精度管理についての詳細についても述べたいと考えている.