Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム5
超音波併用乳房検診の有用性,現状と課題

(S139)

乳房超音波精度管理ファントム

The Quality Control Phantom for Breast Ultrasound

中島 一毅

Kazutaka NAKASHIMA

川崎医科大学乳腺甲状腺外科

Breast and Thyroid Surgery, Kawasaki Medical School

キーワード :

 近年のフルデジタル超音波診断装置は,もともとの超音波反射信号をそのまま画像にしたのではなく,ソフトウエアにて見やすく視覚化した絵である.レントゲンの物理特性に依存し,直接フィルムに焼き付けられる写真であるアナログマンモグラフィとはこの点で,大きく異なる.
 どちらも同じ乳がん検診に用いられるモダリティであるが,超音波装置には標準画像というものが存在せず,各メーカーが独自の視点で開発を進めている.
 実際,臨床現場での多くの装置は使用上問題ないと考えられるが,比較する基準画像がないため,ユーザー側が装置の適正や,使用環境,劣化に気づかず,診断を誤る可能性も指摘されていた.ましてや一定の基準でスクリーニングを行う,超音波検診においてはこの問題がより重要となる.
 この基準化,すなわち精度管理を目的に,日本医学放射線学会・乳房撮影専門小委員会,日本乳腺甲状腺超音波診断会議・精度管理研究班が中心になり,乳房超音波精度管理ファントムの研究が進められていた.様々な試行錯誤の後,本年1月,商品として一般販売が可能な「乳房超音波精度管理ファントム6G(発売元 京都科学KK)」が開発された(図1).本ファントムはさまざまなターゲットと基材により構成され,装置の方位分解能と距離分解能,コントラスト分解能,スライス厚方向の分解能,さらに深さに応じて十分に画像を表示できるどうかのペネトレーションやスペックルパターンも評価可能である(図2).本ファントムの日常診療への導入により,精度管理された装置を,適切な条件下に使用することにより,装置による客観性,再現性が保障され,効果判定のための測定誤差が軽減されていくことが期待される.
 また,現在,厚生労働科学費研究補助金(第3次対がん総合戦略研究事業)「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験」(J-START)が行われているが,この臨床試験の導入において,装置や使用条件,経年変化による画質の低下等が臨床試験のトライアルバイアスにならないような精度管理システムが要求され,本ファントムが,発売に先行しJ-START特式ファントム(外観は異なるが内容組成,ターゲットは共通)として,すでに提供,使用されている.
 乳房超音波併用乳がん検診において,超音波診断装置,使用環境の精度管理に「乳房超音波精度管理ファントム」は必須であり,紹介,解説させていただく.