Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム5
超音波併用乳房検診の有用性,現状と課題

(S138)

超音波併用乳房検診に向けて −超音波講習会の現状とそのあり方−

A Present and Future State of JABTS Breast Ultrasound School

藤本 泰久1, 東野 英利子2

Yasuhisa FUJIMOTO1, Eriko TOUNO2

1尼崎厚生会立花病院乳腺外科, 2筑波大学臨床医学系放射線科

1Deputy Director, Tachibana Hospital, 2Department of Radiology, University of Tsukuba

キーワード :

 我が国における乳癌罹患率と死亡率は増加の一途を続けているが,欧米において罹患率は増加か横ばいであるのに対し,死亡率は1990年を境として減少してきている.その数年前よりマンモグラフィの検診が広く行われるようになったとのことで,それが減少の一因であると考えられている.その事実を受け2004年厚労省は「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を改定し,乳がん検診は40歳以上,2年に1回のマンモグラフィ併用検診を基本とするように提言がなされ,現在市町村を中心としてこの提言に沿った乳がん検診が一般に行われつつある.しかし,乳がん検診にマンモグラフィを導入した根拠は,3-40年前の欧米においてのランダム化比較試験の結果であり,欧米と比較して高濃度乳房の多い我が国においてのエビデンスはない.予想されるように,マンモグラフィ検診で40歳代の感度が71%という低いデータも出てきており,相補的に乳がんが発見出来るという超音波を乳がん検診に導入すべきであるという考えが出てきているのは当然のことかと思われる.
そこで,がん対策のための戦略研究「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験」J-START(Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial)が約8億円をかけ,12万人を対象とし開始された.この研究でポジティブデータがでなければ,半永久に超音波が乳がん検診に導入されないことも考えられ,是が非でもこの研究を成功に導かなくてはならない.
このためには,精度の高い超音波診断は必須であり,同じ用語,診断基準でもって超音波を行ってゆくことを全国レベルで統一する必要がある.臨床の場における超音波診断能を向上することに加え,このことを目的とし,2001年1月日本乳腺甲状腺超音波診断会議主催の乳房超音波講習会が開始された.その後全国各地において医師対象,技師対象の講習会が展開され,2008年度末で第50回を迎える予定である.
講習会は医師,技師とも2日間で行われ,全体講義,グループ講義,試験が行われる.全体講義の内容は,乳腺疾患の臨床的基礎知識,病理,超音波組織特性,超音波検査法,用語,要精査基準,所見の記載法などほぼすべての項目が網羅されている.グループ講習では,各乳腺疾患の超音波像を見る講義,ファントムを用いた超音波実習や超音波下穿刺の実習,受講者の施設で得られた画像やデータを持ってきていただく画像評価などが行われる.最後に,静止画50題,動画50題の試験があり,各自,A判定(乳がん超音波検診において指導的立場になることが期待される.),B判定(乳がん超音波検診実施者として活躍を期待される.),C判定(乳がん超音波検診実施者として,更なる研鑽を積むことが期待される.)と評価される.
 このシンポジウムでは,現在行われているこの乳房超音波講習会の実情,問題点などを紹介し,今後の在り方などを述べたい.