Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム5
超音波併用乳房検診の有用性,現状と課題

(S138)

超音波診断装置の基準と検査環境

Equipment and Environment of Ultrasonic Examination

尾羽根 範員

Norikazu OBANE

財団法人住友病院超音波検査部

Department of Ultrasonic Examination, Sumitomo Hospital

キーワード :

 超音波による乳がん検診ガイドラインには,超音波診断装置の基準と検査環境について以下のように記載されている(抜粋,一部改変).
■超音波診断装置
【超音波診断装置】
体表臓器用探触子の性能が十分に発揮できること.
【探触子】
体表臓器用と標榜し,使用周波数10MHz程度,視野幅35mm以上,規定のファントムで所定の画質条件を満たすもの.
【モニタ】
ブラウン管モニタは十分な大きさがあり,液晶モニタは描画追随性が良好で角度依存性が強すぎない.読影モニタは検査時の画像が良好かつ忠実に再現できること.
【記録装置】
デジタル記録推奨,ネットワーク環境の整備が望ましい.DICOM推奨(圧縮する場合は5分の1を限度).最低限ハードコピーは備え,方法に関わらず検査画像が再現できるよう調整する.
■条件設定
【画質】
正常乳腺の断層像にて皮膚(多層構造),皮下脂肪組織,浅在筋膜浅層,乳腺組織,乳腺後隙,大胸筋などが明瞭に描出でき,腫瘤の内部エコーが的確に判読できること.
【視野深度】
50mm程度を標準とし,適宜に拡大縮小を行ってもよいが過度の拡大はつつしむ.
【検査環境(明るさ)が変化したときの対応】
人間の目は周囲が明るくなるほど暗い色に対する感度が低下するのでディスプレイの調整が必要.
【プリンタの調整】
対応した記録紙を使用し,モニタ画像が忠実に再現できるようにする.
■検査環境
【明るさ(照明など)】
必要以上に暗くしない.モニタの背後が明るすぎずモニタには光が直接映りこまないようにする.
【温度】
被検者が寒すぎないようにする.
【検査人数】
両側乳房の走査時間は5分を最低限度とし検者の習熟度によりそれ以上の時間をかける.1日に1検者が検査する被検者数は40名を超えない.1時間の検査数は検者1名あたり8名を目安とし,連続1時間検査を行ったのち10分程度の休止時間を設ける.1日の検査時間は5時間を限度とし休止時間を設けても3時間以上連続して検査をしない.
【検者の位置】
検者用の椅子とベッドの高さは,被検者の乳房に探触子を乗せたときに検者の上体が自然な姿勢となり上肢の動きに余裕があること.モニタ上端が検者の目の高さよりやや低く,検者の上肢の高さに比べ装置の操作盤は必要以上に高くないこと.
※補足:上記を満たすため座面の高さ調節が容易な椅子を使用するとよい.
 以上は検査の質を保つための基準として考案されたものだが,実態はどうだろうか.装置に関して,日本乳腺甲状腺超音波診断会議が中心となって開催している講習会への参加者(臨床検査技師および診療放射線技師93名)のデータでは,5年以内に購入した装置は65%,10年以内では95%.探触子は96%が電子リニア型で使用周波数は10MHz以上が89%,7.5MHzが9%(アニュラアレイ型含む)であった.比較的良好な印象だが,乳房超音波検査に関心が強い講習会参加者のデータであることを踏まえておく必要がある.画質では高周波探触子ながら血管用の条件での使用や,多様な初期設定のまま調整せずに使用している例が散見された.
 検査環境については通常の医療施設であっても望ましい状態にあるとは限らない.ましてや出張検診ともなれば検査環境の悪化が強く懸念される.会議机をベッドの代用にするのはよい方であって,ベッドがなく布団を敷いて検査した例もある.防護を必要とせず機材も軽量な超音波検査の簡便性ゆえ,かえって悪条件での検査を強いられやすいともいえるだろう.