Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム4
動脈硬化に迫る

(S136)

下肢閉塞性動脈硬化症の診療における超音波の有用性

Usefulness of Ultrrasonography for the aterosclerotic peripheral arterial disease

平井 都始子

Toshiko HIRAI

奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部

Endoscopy and Ultrasound, Nara medical university

キーワード :

下肢動脈では動脈硬化による慢性閉塞性病変や動脈瘤の診断,治療前後の評価,経過観察などに超音波検査が用いられている.本シンポジウムでは,主に閉塞性動脈硬化症の診療における下肢動脈エコーの有用性をCTやMRIとの関連において述べる.
1.閉塞性動脈硬化症のスクリーニング検査
 間欠性跛行や冷感など慢性閉塞性動脈疾患を疑う症例に対して,侵襲無く手軽に施行できる下肢動脈エコーは第一に選択すべき画像検査法である.最近では,CTやMRIの進歩により短時間で広い範囲の動脈の描出が可能となっているが,CTでは被曝や造影剤の使用が避けられず,MRIは超音波やCTに比べると装置の台数が少なく,分解能がやや劣り,検査料も高い.したがってこれら検査法をスクリーニング検査に手軽に用いるべきではない.下肢動脈エコーは,腹部大動脈の分岐部から足関節レベルまでの下肢動脈の全体像を把握するには多少の熟練が必要であるが,形態的な変化だけでなく,カラードプラ法やパルスドプラ法により局所の血流速度や方向,血流異常などの詳細な血流情報をリアルタイムに評価することができる.パルスドプラ法による血流波形解析を,鼠径部,膝窩部,足背,内踝など複数の部位で計測すれば,血流波形の変化から径狭窄率50%以上の有意な閉塞性病変の拾い上げと病変部位の予測が可能である.また,同じような閉塞病変であっても側副路の発達状況により虚血の程度や症状は異なるが,血流速度や血流波形から血流障害の程度をある程度把握することもできる.病変の範囲,狭窄の程度,血管壁や内腔の状態についても空間分解能が高く詳細な情報が得られる.最近の超音波装置では,腸骨動脈から足背動脈レベルまで,動脈壁の石灰化が強い症例を除けばほぼ観察可能である.
2.治療前後の評価
 外科的治療や血管内治療の術前には病変の範囲や狭窄の程度などの情報とともに,アプローチする血管や吻合部となる血管の情報も大切である.バイパス術後においてはバイパス内の血流と吻合部の評価,血管内治療の術直後は,病変部の血流改善状況と末梢血流の評価,穿刺部血管の合併症の有無のチェックが重要である.バイパス吻合部や血管内治療のための穿刺部は,皮下の浅い部位のことが多く下肢動脈エコーは最も手軽に観察できる検査法である.合併症の一つである穿刺部の仮性動脈瘤では超音波プローブで圧迫することにより高率に治癒できる.
治療前後の効果判定については,CTAやMRAでは形態的な評価しかできないが,下肢動脈エコーでは形態的な改善だけでなく血流速度や血流波形の計測により定量的な評価も可能である.また,CTAやMRAではステントの影響のため病変部の血管壁や血流状況が十分把握できない場合も多い.治療前後の評価に有用な情報は下肢動脈エコーが最も詳細にを与えてくれる.
3.血管内治療への応用
 血管内治療は,従来X線透視下に施行されてきたが,閉塞病変では血管の同定ができず,カテーテル操作は手の感覚に頼らざるを得なかった.しかし超音波をガイドに施行すれば,リアルタイムに血管腔とカテーテルの位置を確認しながら操作することができ,より安全で確実である.