Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム4
動脈硬化に迫る

(S136)

動脈硬化性腎臓脈狭窄症の臨床的意義

Clinical Impact of Atherosclerotic Renal Artery Stenosis

横井 宏佳

Hiroyoshi YOKOI

小倉記念病院循環器科診療部長

Department of Cardiology, Kokura Memorial Hospital

キーワード :

全身の動脈硬化性疾患としてはこれまで,脳血管障害による脳卒中,冠血管障害による心筋梗塞,狭心症,下肢血管障害による下肢閉塞性動脈硬化症が注目されてきたが,人類の高齢化,過食と運動不足により腎血管にまで動脈硬化が及び腎血管障害による,高血圧,心不全,狭心症,腎不全が注目されている.これまで,腎血管はFMDによる若年性高血圧症のみが強調されてきたが,これからは動脈硬化性腎動脈狭窄症が増加してくる.動脈硬化性腎動脈狭窄症は腎血管性高血圧,虚血性腎症,狭心症,心不全を惹起して心血管事故を誘発し,生命予後に影響及ぼす病態として近年注目されている.冠動脈疾患患者で腎動脈に75%以上の高度狭窄が存在すると予後が不良となることが報告されている.虚血性腎症は透析患者の15%を占めるともいわれており,早期発見,治療が透析導入の回避につながるのではないかと期待されている.頸動脈狭窄症と同様に多枝冠動脈疾患患者は高率に動脈硬化性腎動脈狭窄症を合併することが日本人のエビデンスとして報告されている.我々が冠動脈インターベンションを施行し,腎機能低下を有する患者の中に予後に影響を及ぼす動脈硬化性腎動脈狭窄症患者が隠れている可能性がある.腎動脈狭窄症の検査法として64列CT,MRIがあげられる.極めて良好な画像が短時間に解析出来るが,造影剤の使用,コスト,稼働性の問題がある.血管超音波検査法は造影剤を使用する事なく低侵襲に,低コストで使用可能で,既存の超音波機器を使用して簡便に施行可能である.そ我々は2003年6月より血管超音波室を開設した.これによりPCI患者の頸動脈,腎動脈,腹部大動脈,下肢動脈の全身血管病スクリーニングが可能となった.2007年10月より施行した待機的PCI患者721例に対する全身血管病調査では24%に冠動脈以外の全身血管病が検出され,その内訳は下肢閉塞性動脈硬化症55%,腎動脈狭窄症19%,頸動脈狭窄症15%,腹部大動脈瘤10%の頻度であった.腎動脈狭窄はPSV>200cmの流速異常と50%以上の狭窄,および臨床症状(反復性心不全,難治性高血圧症,進行する腎機能低下)あってはじめて血行再建の適応になる.