Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム4
動脈硬化に迫る

(S135)

頸動脈プラーク,狭窄

Evaluation of carotid plaque and stenosis

濱口 浩敏1, 今西 孝充2

Hirotoshi HAMAGUCHI1, Takamitsu IMANISHI2

1神戸大学医学部附属病院神経内科, 2神戸大学医学部附属病院検査部

1Neurology, Kobe University Hospital, 2Clinical Laboratory, Kobe University Hospital

キーワード :

動脈硬化が進展し,隆起性病変となった場合,プラークと呼ばれる.頸動脈プラークの評価としては,非侵襲的検査である頸動脈エコー検査がよく用いられる.頸動脈エコー検査におけるプラークの定義として,日本超音波医学会で提唱されている,超音波による頸動脈病変の標準的評価法(案)1)では,IMC表面に変曲点を有する限局性の隆起性病変と定義されており,隆起の程度については言及されていない.また,この中にはremodeling病変も内包されている.一方,日本脳神経超音波学会の提唱する頸部血管超音波検査ガイドライン2)では,厚みが1.1mm以上の隆起性病変と定義されている.
動脈硬化病変の評価としてプラークを観察する際に重要なのは,表面性状,内部性状を評価することで,安定プラークであるのか不安定プラークであるのかを確認することである.特に潰瘍病変や,内部性状が低輝度であり表面のfibrous capが薄いようなプラークの場合には,高率に塞栓子となりうるため注意が必要である.また,最近では可動性プラークの存在も重要視されてきている.プラークの性状を詳細に評価することで,脳梗塞発症における危険性の評価が可能になり,治療方針の決定に役立つ.頸動脈の動脈硬化度を半定量的に評価する簡便な判断基準として,プラークスコアを用いる場合もある.
プラークがさらに進展していき,血管内腔の50%以上の面積を占めるようになると,頸動脈狭窄として診断する.プラークの評価方法としては,NASCET法,ECST法,短軸面積法がよく用いられている.NASCET法とECST法は元々血管造影検査での基準であり,エコー検査上,各々の検査法での数値には誤差が生じることに注意する必要がある.一方,血流速度測定は最も信頼性のある評価法である.現在は収縮期血流速度が200cm/sec以上で70%以上の狭窄として定義する.治療法としては,外科的治療として内膜剥離術と頸動脈ステント留置術を用いるか,内科的治療を行うかを判断する.治療後の経時的変化についても,定期的にエコー検査で評価する.
プラークや狭窄の評価法としては,頸動脈エコー検査が最も非侵襲的であり,汎用性が高いが,一方で内頸動脈の高位病変や石灰化病変などでは信頼性が落ちる.高位狭窄病変や近位狭窄病変をエコーで評価する際には,血流波形で推測することが可能である.また,狭窄部位が石灰化病変中心である場合には,カラードプラで乱流血流を認めた場合,その部位に高度狭窄がある可能性が高い.その他の検査法として,血管造影検査のほか,最近ではCTAやMRIプラークイメージングなども用いられるようになってきている.これらの検査を組み合わせることにより,より正確な評価が可能となる.
頸動脈プラーク,狭窄とも脳梗塞の危険因子となり,特に動脈原性脳塞栓症や血行力学性脳梗塞を考えた場合には,頸動脈の詳細な評価が診断・治療方針決定に重要である.今回,プラーク病変,狭窄病変の評価方法,治療方針について頸動脈エコー検査を中心に解説する.
参考文献:
 1)日本超音波医学会用語・診断基準委員会,頸動脈超音波診断ガイドライン小委員会.超音波による頸動脈病変の標準的評価法(案).Jpn J Med Ultrasonics.35(2):202-218,2008
 2)日本脳神経超音波学会・栓子検出と治療学会合同ガイドライン作成委員会.頸部血管超音波検査ガイドライン.Neurosonology.19(2):49-67,2006