Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム4
動脈硬化に迫る

(S135)

IMTの臨床的意義

Clinical Impact on Measurement of Intima-Media Thickness

徳竹 英一

Eiichi TOKUTAKE

徳竹医院内科・循環器科

Naika, Tokutake Clinic

キーワード :

【はじめに】
わが国において,糖尿病(DM)ならびにメタボリックシンドローム(MS)が増加傾向を示しており,平成19年の国民健康・栄養調査によると予備群を含めてDMは2,210万人,MSは2,010万人と報告されている.このことは心血管疾患発症の増加を示唆しており,プライマリーケアにおいて動脈硬化予防を考慮した治療戦略が必要となってきている.内膜中膜複合体厚(IMT)を測定して早期動脈硬化診断を行うことにより,動脈硬化度に応じたオーダーメイド治療も可能と思われる.今回,IMTによるリスク評価,ならびに,脂質低下療法による抗動脈硬化作用を検討して,サロゲートマーカーとしてのIMTの臨床的意義についてご提示したい.
【方法】
IMTの測定は,8.5MHzのリニア型プローブを用い,東芝SSA-700Aを使用している.総頸動脈をBモード法にて長軸画像を描出して遠位側にて最大肥厚部を含む1.0cm間隔の3点を計測してその平均値とした.統計解析は,SAS version 9.1 を用いた.
【MSのリスク評価】
MSは虚血性心疾患をはじめ心血管病の高リスク因子であることが知られているが,IMTを用いてMSのリスクを検討した.生活習慣病患者123例のうちわが国の診断基準によりMSと診断した61例においてMSがIMTの0.1mm肥厚に及ぼすリスクを性と年齢で調整したロジスティック回帰分析を行ったところ,非MS群に比較してMS群では3.8倍有意なオッズ比の増加を認めた(P<0.01).さらに,MSの危険因子をすべて合併した群においてそのオッズ比は8.9倍と著明な増加を示した(P<0.01).
【DMのリスク評価】
糖尿病患者 148例(インスリン治療19例,経口薬治療129例)において高血圧(収縮期血圧140mmHg以上),LDL-C(140mg/dl以上),HDL-C(39mg/dl以下),空腹時血糖(140mg/dl以上),食後2時間血糖(200mg/dl以上),HbA1c(6.5%以上)の各因子が,頸動脈硬化に及ぼすリスクを比較した.その結果,食後2時間血糖のオッズ比は6.9倍,LDL-Cは5.9倍とそれぞれ有意なリスクの増加を認めたが(P<0.05),他の因子では有意な増加を認めなかった.食後高血糖と心血管障害との関連はDECODE研究やFunagata研究で明らかとされているが,今回の検討でも,食後高血糖が高リスクを示した.さらにLDL-Cについても重要な因子であることが推察された.
【脂質低下療法のIMTに及ぼす影響について】
プラバスタチン(P)35例,アトルバスタチン(A) 75例,ロスバスタチン(R)34例,フルバスタチン(F)20例,エゼチミブ(E)28例の投与を比較した.各スタチン薬は投与6ヶ月においてIMTの有意な退縮を認めたが,エゼチミブでは有意な退縮を認めなかったことより,エゼチミブの抗動脈硬化作用についてはさらに検討が必要であると思われた.
最後に,ロスバスタチンとプラセボを比較したMETEOR試験,ならびにシンバスタチン単独投与とシンバスタチン/エゼチミブ併用とを比較したENHANCE試験についてもご提示したい.
【結論】
1.IMTはメタボリックシンドロームや糖尿病におけるリスク評価のサロゲートマーカーとして有用な指標である.
2.IMTによる血管の形態診断を行うことにより動脈硬化の病態に応じた治療ならびに治療の効果判定が可能である.