Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム4
動脈硬化に迫る

(S134)

新技術の血管壁弾性計測に基づくプラーク性状診断

Qualitative diagnosis of athromatous plaque using a new elasticity imaging technology

市来 正隆1, 長谷川 英之2, 金井 浩2

Masataka ICHIKI1, Hideyuki hasegawa2, Hiroshi KANAI2

1JR仙台病院血管診療センター, 2東北大学大学院工学研究科電子工学専攻

1Vascular clinical center, Sendai Hospita of East Japan railway campany, 2Department of Engineering, Tohoku University Graduate School

キーワード :

(目的)血管の硬さの評価では血管長軸方向は脈波伝播速度(PWV),円周方向はstiffness parameterなどが測定されているが,いずれも平均的弾性特性であり,動脈硬化性プラーク病変の局所弾性特性を直接に評価できる方法はなかった.新技術の位相差トラッキング法では血管壁の数百ミクロンの厚さ毎の瞬時的な数十ミクロンの厚み変化を高精度に計測でき,血管壁局所毎の弾性率を抽出できる.この方法を用いて,血管イベントの発症の主要因であるプラークの易破裂性や不安定性を評価できるか検討した.
(原理と方法)位相差トラッキング法はパルス送信間隔(100〜250μs)で体表から送信した超音波パルスに対する動脈壁内部の反射波の位相変化を高精度に検出する.各測定点の変位をサブミクロンオーダでトラッキングして変位計測するものである.厚み最大変化と上腕動脈の脈圧差から各測定点の円周方向弾性率を算出し,深さ方向と軸方向の空間分解能が,各々0.375mmと0.3mmの弾性率断層像を得ることができる.通常の超音波エコー装置のリニア形プローブ(中心周波数7.5〜10MHz)を使用するが,臨床対象となる頚動脈では病理組織像を得るのは困難なため,血行再建術で摘出予定の大腿動脈を評価対象として代替した.
(結果)術前に計測した弾性率断層像と手術により摘出された計測部位の血管壁組織像を比較した結果では内,中,外膜各層で良好な対応を示した.in vitro実験においては脂質,血栓,線維組織,石灰化の弾性率ヒストグラム(図)から弾性率ライブラリを求めた.これに基づいて電子的組織染色を行った結果,各成分組織に対応した組織弁別能を有し,柔らかい組織(脂質,血栓)と硬い組織(線維組織,石灰化)の分類は可能であった.
(まとめ)新たに開発された高精度超音波計測法と電子的染色の組織性状診断は動脈硬化性プラーク内部の機械的特性を非侵襲的に計測し,組織同定を行う方法である.プラークの易破裂性の有無や退縮,安定化に向けての治療効果判定に新たな知見を加えると考える.