岡田 孝

Takashi OKADA

アロカ株式会社研究所

Research Laboratory, Aloka Co., Ltd.

キーワード :

【はじめに】
超音波による血流計測で思い浮かぶ方法はドプラ法であろう．超音波ドプラ法は，1955年に世界で初めて里村ら^1）．によって開発された．これ以降，連続波ドプラ法，パルスドプラ法が開発された．更に1983年には滑川らによって，血流の速さや乱れを，2次元的，かつ，リアルタイムで表示するカラードプラ法が開発された^2）．これらの方法により，現在の超音波ドプラ法の基礎技術は確立されたと言える．
今日，超音波ドプラ法は臨床的に不可欠な非侵襲的循環動態診断法の一つとなっている．しかし，ドプラ法の原理的な制約や診断装置の設定条件により，同じ断層面であっても，表示される血流情報が異なることがある．血流を定量的に計測する場合，画像の見え方が変わることは，計測結果も変わることにつながる．計測部位に応じて，種々の制約の影響を低減し，画像を見やすくするために装置条件を適切に設定するが，これらの制約が画像にどのように影響しているかを示す．
【カラードプラ】
カラードプラ法は断層像内の血流をリアルタイムで計測できるという特徴がある．一方，同一ビーム方向に複数回の送受信を行なうため，Ｂモード法に比較して，時間分解能が悪くなる（フレームレートが低くなる）．送受信の条件により，Ｂモード法に比べて空間分解能が悪くなり,血管からのはみ出し（ブルーミング）が生じることがある．また，運動する組織の影響によって，血流が存在しないところにカラー表示されるアーティファクトが生じることもある．一例として，図1に，血流が血管からはみ出している画像を示す．
【パルスドプラ】
パルスドプラ法の利点は距離分解能を有することである．パルス超音波を送信し，受信信号にサンプルゲートを設定することにより，特定の深度のドプラ信号を取り出すことができ，ゲート内の血流速度分布を周波数スペクトルとして表示できる．しかし,組織からの反射信号（クラッタ信号）を除去するフィルタの特性によって，その周波数スペクトルの表示が異なってくる．
【まとめ】
原理的な制約や診断装置の設定条件により，表示される血流情報が異なることを示した．
【文献】
［1］里村茂夫他:日本音響学会講演論文集（1956-5）
［2］滑川孝六他:第42回日本超音波医学会講演論文集（1983）,541-542