Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム2
超音波検査と教育−超音波専門医と超音波検査士の育成について考える

(S127)

超音波検査と教育−超音波専門医と超音波検査士の育成について考える−表在

How to educate and train the sonographers and sonologists in the area of ultrasound for superficial organs, especially for the breast

東野 英利子

Eriko TOHNO

筑波大学大学院人間総合科学研究科

Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba

キーワード :

体表領域の中で乳房超音波検査について述べる.
乳癌は日本人女性が最も罹患しやすい癌であり,乳癌の罹患率,乳癌による死亡率が増加傾向にある中,乳癌の早期検出,診断,治療が注目され,乳癌検診が盛んに行われるようになってきている.乳癌検診のmodalityとして世界的に認められているのはX線マンモグラフィであるが,乳癌罹患率の高い40歳代後半から50歳代の日本人に対しては超音波検査も有用であろういう考えも多く,超音波を用いた乳癌検診も多くの施設で行われている.ここで活躍するのは超音波検査士である.検診というと病変の拾い上げのみと考えられがちであるが,乳房超音波は非常に小さな変化も拾い上げるため,特異度が低いのが欠点である.そこで超音波による乳癌検診で必要とされる能力はリアルタイムのスクリーニングで病変を検出する能力とそれに対し精査が必要かどうかを判断する能力である.よって,この2つの能力の育成と評価が必要である.ここで重要なポイントは病変の検出と評価が動画の中でなされるということである.
私は他の学術団体において超音波による乳癌検診の精度向上のための講習会を開催する責任者をさせて頂いている.ここでは目的が明らかであるので,それが達成できるような方法が必要である.現在行っていることはスクリーニングを模した動画の中に精密検査を必要とする病変があるかどうかを判断する訓練で,講習会の最後にはその能力の評価を行っている.検出した病変に対し精査が必要かどうかを決めるには,悪性を疑う強さをカテゴリー分類を用いて表すとともに,鑑別診断を挙げるところまで要求している.鑑別診断が挙げられてはじめてカテゴリー分類が可能である.よって講習会の内容もこのコンセプトに沿ったものとなっている.
乳房超音波専門の医師に関しては私も学んでいる立場であり,育成などということは恐れ多い.しかし自分がどのようにして学んできたかを顧みると,自分が遭遇した個々の症例から学んできたように思う.それには超音波誘導下のインターベンションによる診断が非常に大きなウェイトを占めている.この手技は乳房超音波を行う医師にとって必須のものであると考えている.しかし,自分が遭遇する症例には限界がある.そこで,知識の共有を目指すべきである.最近の超音波診断装置は高品質の動画を保存する機能があり,それを見るとまるで自分が行っているような臨場感がある.動画による教育がこれからは主流となるであろう.
最後に検診の判定医について述べる.検診の判定医は自らが熟練した超音波専門医師であることが理想であるが,実際には難しい.検診機関と精密検査機関でどちらが熟練している必要があるかといえばそれはやはり後者であろう.そこで検診においては要精査基準を定め,それに沿った判定を下すことでの精度保証を考えている.これを普及することにより,日本全国である程度の質の高い,しかも均質な検診が行われ,乳癌超音波検診の有効性や問題点の評価が可能となるであろう.