Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム2
超音波検査と教育−超音波専門医と超音波検査士の育成について考える

(S126)

超音波検査と教育−超音波検査士育成の現状と課題−

Education for ultrasonic examination −Present status and problems of education for sonographer−

三原 修一1, 大竹 宏治1, 木場 博幸2, 平尾 真一2, 田中 信次2, 光永 雅美2

Shuichi MIHARA1, Kouji OTAKE1, Hiroyuki KOBA2, Shinichi HIRAO2, Shinji TANAKA2, Masami MITSUNAGA2

1日本赤十字社熊本健康管理センター消化器科, 2日本赤十字社熊本健康管理センター画像診断課

1Gastroenterology, Japanese Red Cross Kumamoto Health Care Center, 2Department of Imaging Diagnostics, Japanese Red Cross Kumamoto Health Care Center

キーワード :

【超音波検診の概要】
我々は,1983年8月から,人間ドックおよび集団検診において,上腹部臓器(肝胆膵腎脾)を対象とした超音波検診を行ってきた.1992年度からは人間ドックにおいて,また1996年度からは集検においても,下腹部臓器および乳腺・甲状腺の超音波検診を行っている.上腹部検診受診者数(〜2004年3月)は延べ1,375,565名で,肝細胞癌347例,胆嚢癌146例,膵臓癌122例,腎細胞癌337例など1,403例(発見率0.1%)の悪性疾患が発見された.下腹部検診受診者数(〜2004年3月)は延べ243,024名で,膀胱癌116例,前立腺癌69例,卵巣癌14例,子宮癌・卵管癌4例など,203例(発見率0.08%)の悪性疾患が発見された.超音波乳癌検診(〜2006年3月)では,144,611名の受診者から,205例(発見率0.14%)の乳癌が発見された.甲状腺検診(〜2004年3月)では,29,715名の受診者から81例(0.27%)の甲状腺癌が発見された.
【検診の方法】
現在,施設内においては9台,集検においては11台(専用の超音波検診車10台)の超音波診断装置を使用している(Toshiba SSA-340A,550A,580A,660A,770A,日立 EUB-5500,Aloka α-10).スクリーニングはすべて技師が行い,人間ドックにおいては1名,集検においては2名の技師を配置している.技師は全員が本学会認定超音波検査士の取得をノルマとしており,現在,消化器31名,体表17名,泌尿器15名が認定されている.画像記録は,専用のファイリングシステムにて行い,必要に応じて動画も記録している.また,前回所見との比較も瞬時に可能である.処理人数は,1時間当たり10名程度を目標としている.年間の受診者数は,腹部9万人,乳腺3万人,甲状腺1万人,合計13万人(一日当たり500〜600名)程度である.
【技師の養成と課題】
現在,毎日約30名の技師が超音波検診を行っているが,精度の高い検診を行っていくためには,常に技師の養成とレベルアップを図る必要がある.当施設では,技師養成のマニュアルを作成し,初心者は熟練した技師が技術指導を担当している.集検においては,熟練技師と初心者,あるいは中堅技師2名を組ませており,ダブルチェック体制によって精度を維持するとともに,教育の場ともなっている.また,読影時には,専門医と技師によるダブルチェックを行い,見逃し防止を図るとともに,初心者も同席させ教育の場としている.学会や研修会,研究会には積極的に参加するようにしており,中堅以上の技師は年1回の学会発表をノルマとしている.また,当施設の専門医や外部講師による勉強会も頻繁に行っており,技師のレベルアップの場となっている.一人で十分に検査を担当できる水準に達する教育期間は,腹部6ヶ月,乳腺・甲状腺3ヶ月(合計で9〜12ヶ月)程度を目安としている.全員が,超音波検査士取得(3領域)を当面の目標としている.スクリーニングを行う技師には,速さ,正確さ(高い精度),効率,臨床疫学的な知識,接客のマナーが要求され,その条件を満たすべく努力している.さらに,超音波診断装置も,カラードプラ法やティシュハーモニックイメージング法が可能な最新機種の導入を進めており,スクリーニングの段階からすでに精密検査レベルの検査を目指している.継続的な技師の養成と検診を推進していくのに必要な技師数の確保が,当施設における重要な課題のひとつである.