Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム2
超音波検査と教育−超音波専門医と超音波検査士の育成について考える

(S126)

脈管と「総合」超音波検査における超音波検査教育

Education in Vascular and General Ultrasonography

金田 智

Satoshi KANEDA

東京都済生会中央病院放射線科

Department of Radiology, Saiseikai Central Hospital

キーワード :

 超音波専門医や超音波検査士に求められる超音波検査とは,患者さんのためになる検査であり,単純に言うと治療に必要な正しい診断であるが,これには一連の検査・診療を通じて正しく診断するための診断,すなわち次につながる診断も含まれる.概要に沿って,まずおのおのの領域での求められる診断レベルをまとめる.
1.脈管領域
 頸動脈領域ではハイリスクな病変,すなわち内頸動脈の高度狭窄,低エコープラーク,潰瘍形成プラークを,下肢動脈では動脈の閉塞・狭窄部位と病変の長さを,下肢静脈では深部静脈血栓症の部位,範囲,新旧の程度を正しく診断できることが最低限のレベルとなる.透析シャントの診断ではPTAか再手術かの判断のための狭窄・閉塞のマッピングを目的とするが,再手術時のプランニングのための情報を得るためには再建に必要な正常の血管まで評価する必要がある.腎動脈では二次性高血圧の原因となる狭窄の発見が重要である.いずれも治療のプランニングに必要な情報に他ならない.
2.総合超音波
 表在領域ではもっとも中心の目的は悪性腫瘍の早期発見であろう.泌尿器,婦人科を含めた腹部領域では,悪性腫瘍を含めた病変の発見と治療のための検査,また急性腹症などの緊急検査が中心となる.悪性腫瘍の評価では病変の正診だけでなく,治療法の選択まで含めた評価,すなわち転移や浸潤の程度など手術の適応判断ができなくてはならない.急性腹症の診断でCTも有力な検査法であるが,近年造影剤の使用がしにくくなっていることや読影の専門医が十分確保できないことなど,やはりさまざまな制約がある.一方超音波検査では,動的観察ができることがCTより有利な点であり,CTを超える診断能力を発揮できることがしばしばある.急性腹症を含めた緊急性のある病変の診断には,超音波検査は今後も必要不可欠な検査と位置付けられよう.問題は超音波検査を使いこなせる医師や技師を増やしていくことにある.
3.このような診断のできる専門医や検査士の育成のためになにが必要か
 1)診断のための臨床情報に関する知識(臨床症状,臨床所見など),2)診断のための超音波画像描出・診断能力,3)診断学の基本としての病理学的な知識,4)確定診断のために次にどのような検査を行うべきかに関する知識,5)治療法の選択に関する知識など,6)CTやMRIなどで指摘された異常を評価するため他のmodalityの基本的な画像の読み方と超音波検査と他検査の使い分けや信頼度に関する知識7)その他指導力や管理能力,人間性についても考慮が必要であろう.
4.専門医と検査士の役割と今後
 すべての医師が超音波像を正しく読めるわけでないのが現実の医療であり,この状況下では検査技師といえども確実な「超音波診断」のできるより専門性の高い能力が求められる時代と言える.これには今まで以上に超音波画像のみならず臨床や治療に関する知識が必要である.医師と技師の境目は,内視鏡を用いた侵襲的な検査やエコーガイド手技など国家資格に基づく制約以外はなく,実質上の診断や次に行うべき検査を推奨できる能力については医師,技師を分けることができない.心エコ−図学会の専門技師制度のように,腹部や表在臓器についても現在の検査士より上位に上級超音波検査士のような資格が必要ではないだろうか.また専門医の育成については,研修医制度のもとで,緊急検査での有用性をてこに興味を持たせていくことが現実的ではないだろうか.