Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム2
超音波検査と教育−超音波専門医と超音波検査士の育成について考える

(S125)

循環器領域超音波検査士の育成について

What is an education in cardiac Sonographer?

高橋 秀一

Shuichi TAKAHASHI

天理よろづ相談所病院臨床病理部

Department of Clinical Pathology, Tenri Hospital

キーワード :

 超音波検査士には,「幅広い知識」「高い技術」「豊富な経験」が必要である.取得後の教育指針がない現状では,個人の努力により日々の研鑽を積んでいることを鑑み,スキルアップの方法について考えてみたい.
 超音波検査の「質」は使用する装置条件と検者の技量に100%依存する.技量とは,鮮明な画像を得ること,得られた情報や所見から血行動態と疾患等を推察することの2点に絞られる.さらに,循環器領域においては緊急性の有無や緊急事態への対応も求められる.
循環器領域に限らず超音波画像を的確に判断するには装置に精通し,患者ごとに適正に調整して画像を撮像することにある.装置の電源を入れたそのままの状態で,フリーズを解除してそのまま使用していないだろうか?患者情報を入力して第1番に行うことはPresetボタンを押し,STCを中央に揃えることである.プローブを患者に当てた瞬間から気分一新してその患者の状態に応じて変更していくべきである.これらプローブ周波数の変更やプローブ交換など装置調節を怠らず行うことで見違えるくらい良質の画像が得られる.アーチファクトの回避を含めてこれらの事項はすべて基礎領域の知識が基盤となることは,遵守すべき基本的事項である.
 参考書に掲載されている写真(最近では,DVDなどの動画)で勉強して,画像や疾患についての知識を積むことは大切なことである.しかしながらもう一歩踏み込んで描出能力という観点から画像を見てほしい.実際には,熟練者の検査を改めて見学してみると良い.
熟練者のエコー像は,超音波ビームを入射する場所や角度,プローブの使い方などのほか,解剖の熟知そして超音波の限界を駆使して独自の技をもって検査にあたっているのである.これらは,文章では表現できないことであり昔気質の表現になるが「技を盗む」これしかないと演者は考える.
 心臓超音波の位置づけは,解剖学的な異常(心腔の大きさ,壁厚,弁の異常を含む),収縮および拡張機能・・・・・など,たくさんあるが最終的には現状の血行動態がどのような状態にあるかを判断することにある.たとえば,左心不全は,左室拡張末期圧が上昇していることを証明することであり,これらを示唆する超音波所見や計測値は数多くある.これらには心内圧の知識と理解がなければ真に評価できているとはいえない.ドプラ波形から得られた情報から肺動脈楔入圧や左室圧拡張末期圧を推定できるという圧波形を自分で描くことができて,はじめて理解できていると判断すべきである.これには,カテーテル検査に精通している技師または医師との連携による勉強が必要であろう.圧波形を知らずして圧情報の推定は机上の空論と同様である.さらに,緊急を要する所見や緊急性を予感する所見には,豊富な経験が必要となる.冷静かつ迅速に対応する先輩技師の行動をみて体験することが肝要である.自分がその状況に直面した際には,最初はサポートをしてもらいながらその「勘どころと,落としどころ」をつかんで欲しいものである.
最後に個人の素質と教育について現状を解析してみる.教育とは個人の素質を見事に開花させるためにあるべきと考えるが,そのさじ加減が難しい.マニュアル至上主義の現況で千歳飴的に量産された技師は果たして次の世を継いでくれるのであろうか?よく「そんなことは,教わっていない.」とのことを聞くが,自分の不勉強を棚上げしている発言であり,とても憂慮する.素質あるものは,独自に「先輩の技を盗み」,独自に自分なりの勉強法を確立して行くものと考える.そのような,技師からの質問や相談には万全のケアーをしたいと心底思っている.