Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム1
異分野との融合による超音波イメージングの新展開

(S123)

乳癌進展診断におけるVolume Navigation機能の有用性

Usefulness of the Volume Navigation function in staging of breast cancer

関口 隆三1, 黒木 嘉典1, 山邉 裕一郎1, 平原 美孝1, 山本 孝信1, 吉田 慶之1, 安藤 二郎2, 阿部 弥生3

Ryuzo SEKIGUCHI1, Yoshifumi KUROKI1, Yuichiro YAMABE1, Yoshitaka HIRAHARA1, Takanobu YAMAMOTO1, Yoshiyuki YOSHIDA1, Jiro ANDO2, Yayoi ABE3

1栃木県立がんセンター画像診断部, 2栃木県立がんセンター乳腺外科, 3GE横河メディカルシステム株式会社超音波統括事業本部グローバル技術・開発部戦略企画開発部

1Division of Diagnostic Imaging, Tochigi Cancer Center, 2Division of Breast Surgery, Tochigi Cancer Center, 3Ultrasound Japan Global Technology & Development Strategic Planning & RD, GE Healthcare

キーワード :

【はじめに】
 乳癌診断におけるMRIの優位性は,癌の乳管内進展巣および副病巣の描出などがあげられる.これらの所見を超音波単独にてMRIと同等,またはそれ以上に捉えることは現段階では困難である.しかしマンモグラフィ画像やMRI画像を参照して超音波検査を施行すると(second look US),情報なしに施行したときには認識できなかったわずかに拡張した乳管や,内部の微細石灰化像などの癌の進展所見を捉えられることがしばしば経験される.
 近年のコンピュータ技術およびセンサー技術の進歩に伴い,超音波検査施行時に事前に撮影されたCTやMRI画像をあらかじめ超音波装置に取り込み,real timeに超音波画像と同期させ対比表示することができるシステムが開発され,腹部領域では広く用いられつつある.今回このようなシステム−Volume Navigationを乳癌術前症例に用い,超音波検査施行時にMRI画像との同期表示を試みたので報告する.
【対象・方法】
 対象は乳癌術前症例4例である.用いた超音波装置はLOGIQ E9(GE横河メディカルシステム).MRI装置はAchiva 1.5T(フィリップスメディカル)で,腹臥位にて撮像された3D dynamic画像を用いた.超音波装置に内蔵されたVolume Navigation機能を用い,超音波画像とMRI画像のreal time同期表示を行い,乳癌の進展診断について評価を行った.
【結果・考察】
 乳癌の形状,乳頭や周囲乳腺組織との位置関係などを参考に,超音波画像とMRI画像との位置合わせを行った.超音波単独では認識することが難しいMRI画像にて描出された癌の周囲組織進展所見を参考にすることによって,比較的容易に超音波にて病変の進展範囲を捉えることができた.Volume Navigation機能はSecond look US時における癌の進展診断への有用性が示唆され,部分切除適応例と判断される病変や癌の乳管内進展の疑われる症例における切除範囲の決定に際し,その効果が期待される.
 今回参照画像としてのMRIは腹臥位にて撮影したが,これは呼吸性移動や体動によるmotion artifactを抑え,画像の質を損なうことなく詳細なMRI診断を行うためである.元来乳腺は可塑性に富む臓器であり,圧迫や体位変換にて容易に変形し,超音波検査と同じ体位−仰臥位にて撮影しても,すべての症例に正確な1対1対応を求めることは難しい.超音波検査体位と異なる腹臥位撮影にて得られたMRI画像と超音波画像との同期は必ずしも正確ではないが,参照画像としての有用性は充分と判断された.