Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム1
異分野との融合による超音波イメージングの新展開

(S122)

低侵襲検査・治療用超音波マイクロデバイスの開発

Ultrasonic microdevices for minimally invasive diagnosis and treatment

芳賀 洋一1, 松永 忠雄1, 江刺 正喜2

Yoichi HAGA1, Tadao MATSUNAGA1, Masayoshi ESASHI2

1東北大学大学院医工学研究科, 2東北大学原子分子材料科学高等研究機構

1Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 2WPI, Tohoku University

キーワード :

 MEMS(微小電気機械システム)技術などの精密微細加工技術を用いて小さくとも高機能な超音波マイクロデバイスが実現できる.これらは,超音波を用いて体内から精密な検査,治療を行うデバイス開発に役立ち,低侵襲医療と呼ばれる,身体を大きく切開せずに内視鏡やカテーテルなどを体内に挿入し従来の手術に匹敵する検査や治療を行う際に有効である.体内に挿入されるカテーテルや内視鏡ツール先端に搭載する以下のような超音波デバイスを開発している.
・術中脊髄虚血検出センサ:
 胸腹部大動脈瘤の手術では,患部を人工血管に置換するために大動脈の一部を遮断するが,大動脈の分枝に脊髄を栄養する動脈があることから脊髄虚血による脊髄障害を引き起こす可能性がある.体外からでは測定が難しい僅かな脊髄への血流変化を術中に迅速かつ確実に検出する目的で,術中に髄腔内に留置されるカテーテル先端に超音波ドップラー血流速センサを搭載したシステムを開発している.
・前方視血管内超音波内視鏡:
 血管内治療を安全かつ確実に行うために,カテーテル先端に搭載する前方視超音波内視鏡を開発している.血管内狭窄部に直接触れることなくカテーテル進行方向の血管走行や病変部の3次元形状を超音波イメージングすることを目指しており,外径3mmのプローブを用い,基本的な撮像実験に成功している.新たに開発したプローブ(図)では超音波トランスデューサとして圧電単結晶のPMN-PTを用いている.
・集束超音波マイクロデバイス:
 内視鏡やカテーテル先端から集束した超音波を組織に照射し精密な超音波治療,例えば超音波と薬剤の相乗効果によって癌などを治療する音響力学療法や,超音波による遺伝子導入を行うための小型集束超音波プローブを開発している.
 近年,MEMS技術を用いることで圧電材料を用いない静電駆動によるダイヤフラム型超音波トランスデューサ(CMUTs)なども開発されてきており,小さく高機能な超音波デバイスの実現により,低侵襲検査・治療用超音波以外にも体内埋込型やヘルスケアなどにも利用される超音波マイクロデバイス開発が広く試みられるようになると期待される.