Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム1
異分野との融合による超音波イメージングの新展開

(S121)

MRIと超音波技術の融合

Fusion of Ultrasound Technology and Magnetic Resonance Imaging

新田 尚隆, 本間 一弘

Naotaka NITTA, Kazuhiro HOMMA

産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門

Institute for Human Science and Biomedical Engineering, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)

キーワード :

1. 緒言
近年,光や超音波,MRI,X線,PETなど異種モダリティを同時に用いて得られる画像や情報,現象を融合・統合し,新たな診断情報の獲得や治療の提供を目指すマルチモダリティ計測・画像化技術の研究が盛んとなっている.融合方式としてナビゲーション手術などにおける画像統合や画像取得前における同時センシングの類が挙げられるが,本稿ではMRIと超音波との融合について,特に後者の観点から概観を試みる.
2. 超音波アシストMRイメージング
超音波の併用またはアシストにより直接または間接的にMR画像のモード変化を促し,新しい診断情報を得る技術を概説する.広義にはその代表例としてMRIガイド下集束超音波治療がある.集束超音波照射後に熱凝固した組織の温度上昇を,MRIにおいて位相差分法などで温度分布を推定し,治療十分性を判定する1).無論,診断のための超音波照射ではないが,結果的に,間接的なMR画像のモード変化が促されている.
一方,直接的なMR画像のモード変化については,動きに対するMRIの高い感受性が利用される.モーションアーチファクトが生じ易い特性を逆に利用し,Motion Sensitive Gradientを用いて媒体内波動伝搬の定量的捕捉が可能になり2),その応用として超音波音場が可視化されている3).また上述の超音波治療における照射位置同定の精緻化を目的として,音響放射圧による媒体内変位をMRIにより検出することも試みられている4-5)
以上で問題となるのは,医療用超音波振動子には一般に高電圧が印加されるため,電磁気学的な干渉によりMRI画像に深刻なジッパーアーチファクトや画像歪みが引き起こされることである.これを回避するため,MRIパルスシーケンスにおけるデッドタイムに超音波パルスを送信する6),超音波振動子を非磁性材料で製作する7),受信コイルのB1低感度域に超音波振動子を配置する5)などの対策が検討されている.
3. MRアシスト超音波イメージングまたは共存化
前節の研究例は比較的豊富だが,逆に,MRIのアシストにより超音波画像のモード変化を促す研究例を見出すことは難しい.一方で両者を共存させる観点からは,MR撮像中にパルスシーケンスのデッドタイムで超音波イメージングを行うことで,MR画像及び超音波画像が共に安定的に得られることが示されている6)
4. 結語
現状の超音波とMRIの融合においては,超音波がモード変化に用いられ,MRI主導の側面が強い.しかしながら相互干渉として考えればその逆もあり得,その場合,診断に有益な情報をどのような物理現象に基づいて得るか,今後の展開先として興味深い.
謝辞
本研究の一部は文科省科研費(20700418)の補助を受けて行われた.
文献
 1)岡田他, 第32回日磁医抄録集:100,2004.
 2)R. Muthupillai et al., Science 269:1854,1995.
 3)C. L. Walker et al., Ultrasound in Med. & Biol. 24:137,1998.
 4)N. Nitta et al., Proc. J. CARS :473,2007.
 5)新田他, 第81回日超医抄録集:S281,2008.
 6)L. Curiel et al., Proc. Ultrason. Symp. :1643,2006.
 7)T. Azuma et al., JJAP. 41 :3579,2002.