Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

教育講演
教育講演2

(S118)

造影超音波の現在と未来

Contrast Ultrasound Present and Future

森安 史典

Fuminori MORIYASU

東京医科大学消化器内科

Department of Gastroenterology and Hepatology,Tokyo Medical University

キーワード :

【はじめに】
 造影超音波検査は,ソナゾイドが2007年に市販され,肝臓の腫瘤性病変の診断に適応となって広く普及するに至った.最近では,臨床研究として肝臓以外の臓器の疾患にも使われ,有用性が期待されている.
【肝がんの診断】
 肝がんの造影超音波は,造影剤の静注後3分までの血管イメージと,10分以降のクッパーイメージの組み合わせで診断される.すなわち前者は,腫瘤性病変の鑑別診断のために使われ,後者は病変の検出に使われる.血管イメージでは,病変の早期濃染とwash-outから診断するダイナミックスタディに加え,高音圧でスキャンボリューム内の気泡を消失させた後の再環流を見ることが診断に寄与する.Replenishment imagingを使って重ね画像を作ることにより,腫瘍の微細な血管をトレースすることができる.この重ね画像により高分解能な血管像を得ることが,より正確な組織性状診断につながる.
 近年,肝臓や腹部の治療において,術中の造影超音波診断が注目されている.微小な肝腫瘍を診断したり,微小な門脈腫瘍栓を診断するために用いられる.
【肝がん以外の適応】
 肝臓においては,びまん性肝疾患とくに慢性肝炎から肝硬変にいたる,肝線維化による肝の間質の変化を診断する目的で用いられる.肝以外の適応としては,膵がん,乳がん,前立腺がんの良悪性の鑑別診断に用いられる.
前立腺がんでは,径直腸的プローブによる造影を用いることにより,前立腺がんの診断のための生検回数を少なくし,がんの診断陽性率を向上させるのに役立つとされる.乳がんでは,皮下注射によるセンチネルリンパ節造影により,適切な術式の決定がなされることが期待されている.
【治療効果判定】
 RFAや肝動脈塞栓術(TACE)などの肝がんの局所治療の,効果判定には,造影CTに比べて,時間分解能,コントラスト分解能,空間分解能に優れる造影超音波がより有効である.客観的な位置情報に欠けるという超音波の欠点を,3D,4D造影超音波がカバーする.
また,治療前後の3D超音波やCTやMRIなどの画像と現在の4Fプローブのボリュームデータを共有し,画像相互のreferenceができる手法が開発されており,上記の治療効果判定にさらに有用性が期待されている.
 がんの血管新生因子阻害剤をはじめとする分子標的治療薬が市販されるようになった.これらの抗癌剤は,腫瘍細胞に対する殺細胞効果ではなく,腫瘍血管の退縮効果であり,早期の効果予測は,微細な腫瘍血管を描出でき,定量的な組織血流の測定も可能と考えられる造影超音波が有用と考えられる.
【HIFU増強効果】
 強力収束超音波治療(HIFU)は,径直腸プローブによる前立腺疾患の治療にはじまり,大型のHIFU装置で,子宮筋腫,乳がんの治療に応用され,さらに最近は肝がん,膵がんにも適応が拡大しつつある.HIFU治療のガイドイメージとしては,MRIや超音波が用いられるが,呼吸性移動のある肝臓や膵臓では,リアルタイムの超音波がより有効である.
超音波造影剤であるマイクロバブルのHIFU増強効果が注目されている.マイクロバブルがHIFUのcavitation nucleiとして働き,より低い音圧でcavitationが惹起されHIFUの熱効果を引き出すことができる.
【まとめ】
 以上のように超音波造影剤は超音波診断のみならず,治療や治療支援への応用まで,今後の展望が期待される.