ソナゾイド造影超音波内視鏡検査が診断に有用であった膵内副脾原発epidermoid cystの一例

はじめに

このたび、日本超音波医学会第98回学術集会において新人賞を受賞する機会を賜り、大変光栄に存じます。日頃よりご指導を賜っている先生方、ならびに診療を支えてくださる多職種の皆様に、ここに厚く御礼申し上げます。
今回発表したのは、「ソナゾイド造影超音波内視鏡検査(contrast-enhanced endoscopic ultrasonography: CE-EUS)が診断に有用であった膵内副脾原発epidermoid cystの一例」です。膵内副脾原発epidermoid cystは極めて稀な良性嚢胞性病変であり、診断が確定すれば経過観察が一般的ですが、腫瘍マーカーの上昇や嚢胞形態の変化を認める場合には悪性腫瘍との鑑別が必要となることがあります。

症例は40歳代女性で、人間ドックの腹部超音波検査にて偶発的に膵尾部の嚢胞性病変を指摘されました。当初は17mm大の嚢胞で、悪性所見を欠くため経過観察となっていましたが、CA19-9の上昇および形態変化を契機に再精査を行いました。ダイナミック造影CTでは25mm大の多房性嚢胞性病変を認め、一部には縮小と増大が混在し、周囲には造影効果を伴う領域も観察されました。
EUS Bモードでは嚢胞内に充実成分と結節を認め、カラードプラでは血流を伴いませんでした。CE-EUSでは、早期相において充実部や結節に造影効果を認めず、一方で嚢胞隔壁や周囲組織には造影効果を示しました。後期相では、嚢胞周囲および充実部にソナゾイドの持続的な取り込みがあり、近接する脾臓と類似した造影パターンを呈し、副脾組織の存在を示唆する所見と考えられました。
患者の希望により腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行しました。切除標本では嚢胞が脾臓組織に囲まれ、その壁は重層扁平上皮で裏打ちされていました。造影後期相で取り込みを示した部位は、病理学的に副脾由来の脾髄様組織に一致しており、画像所見と病理所見の整合が確認されました。最終診断は膵内副脾原発epidermoid cystでした。
本症例を通じて、MRIや核医学検査では評価が難しいとされる菲薄な副脾組織をCE-EUSで描出できた可能性が示されました。今回の経験から、CE-EUSは膵内副脾原発epidermoid cystの診断に有用な可能性があると考えられ、本症例はその意義を示唆する貴重な一例であったといえます。
今回の発表を通じて得られた知見を、今後の臨床に活かし、膵嚢胞性病変の診断や治療方針の検討に役立てていきたいと考えております。今回の受賞を励みに、引き続き研鑽を重ね、患者さんにより良い医療を提供できるよう努めてまいります。

高木 大貴(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院 消化器内科)