Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
症例 3

(S857)

子宮筋腫核出後創部妊娠の流産症例

A case of myomectomy scar pregnancy

田中 里美, 正岡 駿, 伊藤 早紀, 助川 幸, 西澤 しほり, 村瀬 佳子, 矢田 昌太郎, 金田 容秀, 田中 利隆, 三橋 直樹

Satomi TANAKA, Shun MASAOKA, Saki ITO, Sachi SUKEGAWA, Shiori NISHIZAWA, Yoshiko MURASE, Shotaro YATA, Hiroshi KANEDA, Toshitaka TANAKA, Naoki MITSUHASHI

順天堂大学医学部附属静岡病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Juntendo University Shizuoka Hospital

キーワード :

【緒言】
子宮筋腫核出後創部妊娠は異所性妊娠の中でも稀で報告もほとんどみられないが,帝王切開創部妊娠と同様に子宮破裂や大量出血のリスクが高く早期の診断・治療を要する疾患である.画像診断としては超音波検査が簡便で有用である.治療法としてはメソトレキセート投与(MTX)を中心とした薬物療法や手術療法,子宮動脈塞栓術などがあるが確立されていない.そのため妊孕性温存希望の有無や病巣の状態,緊急性などを考慮し慎重に治療法を選択する必要がある.今回我々は,超音波検査から子宮筋腫核出後創部妊娠と診断し,妊孕性温存希望によりMTX投与した症例を経験したので報告する.
【症例】
34歳0経妊0経産,27歳時に腹腔鏡下子宮筋腫核出術(子宮前壁筋層内筋腫1個を核出)の既往がある.今回,他院にて凍結融解胚移植で妊娠成立したが,妊娠6週稽留流産の診断で子宮内容除去術の方針となり,頚管拡張を行う際に410gの出血を認めたため,当院に救急搬送となった.来院時,意識清明,血圧100/56mmHg,心拍数69/分,下腹痛なし,活動性性器出血なし.超音波検査上,前壁筋層の菲薄化とその部位にカラードプラ法及びHD live flowで豊富な血流を伴った胎嚢を認め,子宮筋腫核出後の創部妊娠が疑われた.血中HCG 70149.3mIU/ml,Hb 11.4g/dlであり性器出血は見られなかったため,血中HCG値と胎嚢周囲に向かう血流を測定し経過観察とした.入院6日目にHCG 51212.6mIU/ml,8日目のRI値は0.68であった.11日目に30845.3mIU/mlと低下したが,超音波検査所見は著変認めず,11日目よりMTX 10mg/日を5日間投与した.血中HCGにおいては,MTX投与後7日目に24937.3mIU/ml,14日目に4056.6mIU/mlと順調に低下を示した.胎嚢周囲の血流に関しては,MTX投与後9日目RI値は0.53,12日目RI値は0.62で変化はなかったが,18日目には胎嚢周囲の血流は消失した.MTX投与後23日目にはHCG 144.2mIU/mlまで低下し,超音波検査では胎嚢は縮小し蜂巣様の8×6m大の腫瘤が認められた.MTX投与後37日目にはHCG 12mIU/mlに低下し,子宮内腫瘤も6×5cm大に縮小し退院となった.MTX投与後92日目には超音波検査上,子宮内腫瘤は消失し,子宮内膜,筋層の正常化を認めた.今後,MRI画像で子宮筋層評価を行う予定である.
【結論】
今回の症例ように,頚管妊娠,帝王切開後創部妊娠,子宮筋腫核出後創部妊娠は稽留流産と診断されることがあり,診断を誤り子宮内容除去術を施行すると大量出血を招き危険である.これらの診断にはカラードプラ法を併用し胎嚢周囲に発達した血流を確認することが重要と思われる.また血中HCG値が低下しても胎嚢周囲の血流はある程度保たれているため,創部妊娠の管理の場合には血中HCG値だけでなく,胎嚢周囲血流の評価を行うことが必要と思われる.