Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
症例 3

(S854)

胎児両側腎臓に多発性嚢胞と羊水過少を認めたが,出生後肺低形成を認めなかった1例

A case of which multiple cysts in the bilateral fetus kidney and oligohydramnios were observed, but pulmonaly hypoplasia was not observed after birth

山村 倫啓, 青木 宏明, 藪崎 惠子, 長谷川 瑛洋, 梶原 一紘, 上出 泰山, 種元 智洋, 佐村 修, 岡本 愛光

Michihiro YAMAMURA, Hiroaki AOKI, Keiko YABUZAKI, Akihiro HASEGAWA, Kazuhiro KAJIWARA, Taizan KAMIDE, Tomohiro TANEMOTO, Osamu SAMURA, Aikou OKAMOTO

東京慈恵会医科大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, The Jikei University School of Medicine

キーワード :

【緒言】
胎児両側多発性嚢胞腎(Multicystic Dysplastic Kidney; MCDK)は超音波検査にて診断されることが多く,羊水過少を伴い,肺低形成を来し,出生後予後不良なことが多い.今回,我々は胎児の両側腎臓に多発性嚢胞を認め,妊娠中期より重度の羊水過少を認めたが,出生後肺低形成を認めず,出生直後良好な児を得たので報告する.
【症例】
22歳,初産婦,家族歴に特記すべきことなし.自然妊娠にて妊娠成立.妊娠20週の健診時までは特に異常所見の指摘なし.妊娠24週の超音波検査時に羊水減少を認めた.妊娠25週3日に羊水減少,胎児両側腎不明瞭を前医で指摘され,精査目的で紹介受診となった.胎児超音波検査では羊水過少(AFI 2.86cm)を認め,両側腎臓は腫大しており(右腎臓 38×25mm,左腎臓 36×24mm),多房性嚢胞を認めた.膀胱への尿貯留は認めており,その他の形態異常は認めなかった.この時点で両親に児が予後不良である可能性を説明した.妊娠26週6日にMRI検査を施行し,胎児腎臓に同様の所見を認め,肺肝比1.6と低く肺低形成が疑われた.多発性嚢胞腎(Polycystic Kidney Disease ; PKD)あるいは両側MCDKが疑われた.その後の経過中,さらなる羊水減少を認めAFIはほぼ計測できなくなったが,両側腎の腫大傾向は認めず膀胱への尿貯留は認めていた.また,児の成長は順調であった.この時点では膀胱が認められることから致死的な状態でないと判断し説明した.妊娠38週0日に誘発分娩を行い,骨盤位経腟分娩となった.児は女児であり,体重 2370g,出生直後から啼泣,体動を認め,Apgar scoreは1分値5点,5分値6点であった.出生時に陥没呼吸を認めたためmask CPAPとし,精査管理目的でNICUに入室となった.出生後児の染色体検査を施行し正常核型であった.超音波検査,DMSA(99mTc-Dimercaptosuccinic acid)腎シンチグラフィーより左腎はMCDKであり,右腎は多発する嚢胞を伴うも腎実質構造を認めており,現在も確定診断に至っていない.
【考察】
今回の症例では胎児診断にて両側多発性腎嚢胞を認め羊水過少も認めたが,膀胱に尿貯留が認められる場合には出生後肺低形成を認めず,出生直後の児は良好である可能性が示された.