Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
症例 2

(S852)

奇形腫との鑑別が困難であった胎児仙尾部神経節芽腫の一例

Neonatal Sacrococcygeal Neuroganglioblastoma Mimicking a Teratoma

関塚 智之, 生野 寿史, 田村 亮, 吉田 邦彦, 五日市 美奈, 能仲 太郎, 山口 雅幸, 高桑 好一, 榎本 隆之

Tomoyuki SEKIZUKA, Kazufumi HAINO, Ryo TAMURA, Kunihiko YOSHIDA, Mina ITSUKAICHI, Taro NONAKA, Masayuki YAMAGUCHI, Koichi TAKAKUWA, Takayuki ENOMOTO

新潟大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Niigata University

キーワード :

【緒言】
胎児超音波検査で臀部に異常隆起を認める症例は髄膜瘤や奇形腫などの頻度が高い.一方で神経芽腫は胎児腹腔内の異常腫瘤として発見されることが多いが,仙尾部に発生することは稀である.
【症例】
32歳女性,妊娠歴1妊0産.特記すべき既往歴・家族歴はなし.自然妊娠し,近医産婦人科で妊婦健診を受けていた.妊娠27週6日に超音波検査で胎児臀部腫瘤を初めて指摘され,精査目的に当院産婦人科に紹介受診した.妊娠28週6日の超音波検査では,仙尾部より外方に発育する7.0cm大の腫瘤を認めた.腫瘤は一部嚢胞が混在しており,血流豊富な箇所もあったが,胎児貧血や心不全を疑う所見は認められなかった.また臀部腫瘤の他には,胎児に形態的異常は認められなかった.妊娠30週6日に胎児MRIを撮影し,充実優位型の仙尾部奇形腫(AltmanⅠ型)が疑われた.腫瘤径は徐々に増大したが,胎児発育やWell Beingは良好であった.分娩様式は,腫瘤による分娩障害や分娩時の腫瘤損傷を回避するため,帝王切開の方針とした.妊娠37週5日,選択的帝王切開術を施行した.出生児は男児,出生体重は3318g,身長48cm,Apgar score 8点(1分値),9点(5分値)であり蘇生処置は必要としなかった.臀部腫瘤は約15cm大で,一部亀裂から出血していた.当院NICUで精査したところ,多数の皮膚転移所見が認められ,組織学的に胎児神経節芽腫と診断された(StageⅣ,中リスク群).児は現在当院小児科にて化学療法を施行中である.
【考察】
神経節芽腫とは神経芽腫の一種であり,副腎髄質や交感神経節から発生する悪性腫瘍である.腹腔内巨大腫瘤を契機に胎児診断されることが多く,妊娠中期から発見されることもある.一方で交感神経節から発生する頸部,胸部,骨盤部などの神経芽腫に関しては,胎児超音波検査で発見されることはきわめて稀である.
仙尾部発生の神経芽腫は新生児期に発見された症例が数例報告されているものの,本症例のように大部分が骨盤外成分であった神経芽腫は胎児期・新生児期においても報告がなく,仙尾部奇形腫との鑑別は困難であると考えられる.
【結語】
奇形腫と診断が困難な胎児仙尾部神経芽腫の一例を経験した.頻度は稀であるが,神経芽腫は臀部腫瘤の鑑別診断として考慮されるべき疾患であると思われる.