Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
脾臓/消化管/その他/症例

(S838)

小児不明熱患者に対して高周波型プローブの脾臓観察が必要であった猫ひっかき病の一例

A child case with fever of unknown origin could been diagnosed as cat scratch disease by spleen observation with a high-frequency linear probe

田原 真琴, 望月 幹彦, 高橋 肇, 横田 麗菜, 中尾 彰裕, 宮﨑 菜穂, 村野 弥生, 中澤 友幸, 畑 明宏

Makoto TAHARA, Mikihiko MOCHIZUKI, Hajime TAKAHASHI, Reina YOKOTA, Akihiro NAKAO, Nao MIYAZAKI, Yayoi MURANO, Tomoyuki NAKAZAWA, Akihiro HATA

1(公財)東京都保健医療公社豊島病院検査科, 2(公財)東京都保健医療公社豊島病院小児科, 3(公財)東京都保健医療公社豊島病院内科

1Department of Laboratory, Tokyo Metropolitan Health and Medical Treatment Corporation Toshima Hospital, 2Department of Pediatrics, Tokyo Metropolitan Health and Medical Treatment Corporation Toshima Hospital, 3Department of Internal Medicine, Tokyo Metropolitan Health and Medical Treatment Corporation Toshima Hospital

キーワード :

【はじめに】
猫ひっかき病は,猫の接触や創傷又は咬傷が原因で発症するBartnella henselae感染症である.主な臨床症状は受傷部の皮膚症状や所属リンパ節腫大,発熱だが,主症状を認めず脾臓内に肉芽腫を形成する非典型例の報告も少なくない.今回,我々は小児不明熱患者に対して高周波型リニアプローブでの脾臓観察が必要と感じた猫ひっかき病症例を経験したので報告する.
【症例】
12歳 男児.不明熱が約2週間続き,一度は当院救急外来へ受診して血液検査で軽度の炎症反応がみられたが,全身状態が良好のため経過観察となった.その後も40℃の発熱が持続していた為,不明熱の精査目的で入院加療となった.
【入院時身体所見と血液データ】
身長:149.1cm,体重:38.5Kg,体温:39.5℃,脈拍:124/分,血圧:102/63mmHg.意識清明.顔色良好.咽頭発赤なし.心肺に異常所見なし.腹部は腸蠕動音正常,平坦・軟,圧痛なし.皮膚に発疹,創傷痕,咬傷痕なし.表在リンパ節の腫脹なし.
WBC:10800/μL(Neut 68.0%,Lymp 26.0%,Mono 4.0%,Eos 2.0%,Baso 0.0%),Hb:13.1g/dL,Plt:48.1×104/μL,AST:36IU/I ,ALT:65 IU/I,LDH:310IU/I,ALP :508IU/I,BUN:6.9mg/dL,Cre:0.43mg/dL,CRP:2.8mg/dL,ESR1h:71mm
【検査と経過】
入院時の腹部レントゲンで右上腹部に石灰化像を認めた.入院初日で行った腹部超音波検査では,17mm大の胆石を認め,脾腫を伴っていた.脾臓内に低エコー病変は検出されなかった.その他,腸間膜リンパ節腫大を認めた.入院2日目に行った造影CT検査は,腹部超音波検査と変化はなかった.入院3日目に行った頸部超音波検査では,頸部に扁平状のリンパ節腫大を認めた.入院9日目に熱源精査目的で再度腹部超音波検査を施行した.入院初日で指摘された胆石や腸間膜リンパ節腫大,脾腫に変化は認めなかった.再度詳細な病歴聴取したところ,猫を飼育していることが判明した.そのため,高周波型リニアプローブで脾臓を検索すると,脾臓内に2~3mm大の低エコー病変が多数検出された.その後B.henselae 抗体価上昇を確認したため,猫ひっかき病と診断した.経過中,抗菌薬は,アジスロマイシンやミノサイクリン,リファンピシンを使用したが,いずれも治療への反応は乏しく,経過観察で症状は次第に改善した.
【考察】
不明熱精査の腹部超音波検査で,脾臓内の低エコー病変を認めた場合には,猫ひっかき病を疑う必要がある.しかし,大きさは5mm以下が多くコンベックス型プローブで見つけるのは困難である.特に大人の体格をした小学校高学年の小児では,通常はコンベックス型プローブで検査を行うのではないかと思われる.今症例初回時検査では脾臓の観察をコンベックス型プローブだけで検査を行っており,脾臓の低エコー病変を見逃している可能性も否定はできない.昨今の猫ブームの中,猫ひっかき病の報告が増えているため,小児不明熱患者の診断の際には,詳細な病歴聴取と高周波型リニアプローブによる脾臓観察が必要であると思われた.