Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
胆道/膵臓/症例

(S834)

胆嚢頸部癌を併存した黄色肉芽腫性胆嚢炎の一例

Coexistence of Xanthogranulomatous Cholecystitis and Gallbladder Cancer

高橋 奈々, 藤田 昭寿, 山形 忠史, 松村 知憲, 藤井 博昭, 長沼 裕子, 石田 秀明

Nana TAKAHASHI, Akihisa FUJITA, Tadafumi YAMAGATA, Tomonori MATHUMURA, Hiroaki FUJII, Hiroko NAGANUMA, Hideaki ISHIDA

1上尾中央医科グループ柏厚生総合病院検査科, 2上尾中央医科グループ柏厚生総合病院放射線科, 3上尾中央医科グループ柏厚生総合病院外科, 4上尾中央医科グループ上尾中央臨床検査研究所病理, 5市立横手病院消化器科, 6秋田赤十字病院超音波センター超音波センター

1Kashiwakousei General Hospital, Department of Clinical Laboratory, 2Kashiwakousei General Hospital, Department of radiology, 3Kashiwakousei General Hospital, Department of surgery, 4Ageo Central Laboratory, Department of pathology, 5Yokote Municipal Hospital, Department of Gastroenterology, 6Akita Red Cross Hospital, Department of Diagnostic Ultrasound

キーワード :

【はじめに】
黄色肉芽腫性胆嚢炎(xanthogranulmatous cholecysititis;以下XGC)は壁肥厚を呈する胆嚢炎の亜型として分類され,十二指腸,結腸や肝臓など周囲臓器に浸潤性に炎症が波及することで胆嚢癌との鑑別が困難なことが多い.今回胆嚢頸部胆管癌を併存したXGCの症例を経験したので報告する.
【症例】
76歳男性.既往歴は高血圧,急性胆嚢炎,家族歴なし.右季肋部痛のため来院された.
【採血データ】
CRP11.96mg/dlと炎症反応を認めた.その他貧血・黄疸認めない.腫瘍マーカー基準範囲内,感染症なし.
【腹部超音波検査】
胆嚢壁は全周性に12mmと肥厚している.内腔は明瞭平滑,胆嚢底部一部に高エコー像が認められたが明らかなRASは認められなかった.患者背景に急性胆嚢炎像があり慢性変化を疑った.
【造影CT検査】
胆嚢壁の不整な肥厚像を認め,隣接する肝床の低吸収域と十二指腸との間の脂肪層の消失を認め十二指腸・肝浸潤を伴う胆嚢癌またはXGC・胆嚢腺筋腫症が疑われた.
この結果を受け慢性胆嚢炎,胆嚢癌を疑い抗生剤が処方され,一か月後再度採血,超音波検査,MRI検査を施行することとなった.
【採血データ】
CRP0.20mg/dlと炎症反応は落ち着き,痛みは軽減していた.他基準範囲内であった.
【腹部超音波検査】
初回とは異なり胆嚢と接している肝臓に低エコー域が見られ腹壁側に突出しているように描出されたため,腹壁浸潤を伴う胆嚢底部癌を疑った.
【MRI検査】
胆嚢壁のびまん性壁肥厚,底部内腔の狭小化胆嚢窩に隣接した肝S4・5は淡い高信号を示し,浸潤性胆嚢癌や黄色肉芽腫性胆嚢炎の炎症期が疑われた.以上の結果から胆嚢癌を疑い胆嚢摘出術が施行された.
【術中迅速病理検査】
術中迅速病理は他施設に提出され,慢性胆嚢炎(黄色肉芽腫性胆嚢炎)を有する胆嚢に,胆嚢頸部に隆起性病変を認める.底部胆嚢壁は肉芽腫性胆嚢炎,胆嚢管断端は上皮の不均一な核腫大が目立ち炎症反応か上皮内腫瘍病変か判断できないとの診断であった.
【細胞診・病理結果】
胆汁細胞診はclassⅢb,病理結果は黄色肉芽腫性胆嚢炎を有する胆嚢に胆嚢頸部胆管癌(15×40mm)が認められた.追加で肝部分切除とリンパ郭清が施行されたが悪性所見は認められなかった.患者は術後安定,化学療法は行わず外来フォローとなった.
【まとめ】
1ヶ月後の超音波で腹壁浸潤と思われた腹壁側に突出した低エコー像は病理結果から炎症の波及像と考えた.XGCは高率で胆嚢結石を認めるが今回の症例では結石は描出されなかった.XGCは稀な疾患であり,術前確定診断が困難である.今回の経験からXGC症例では,胆嚢癌の合併の可能性を常に念頭に置き,他検査と連携し情報の共有化を行うことを再認識した.