Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓/胆道/膵臓/症例

(S831)

携帯超音波による肝外胆管観察の工夫

Observation of extrahepatic bile duct by pocket-sized US

石田 秀明, 長沼 裕子, 大山 葉子, 長井 裕, 山崎 延夫

Hideaki ISHIDA, Hiroko NAGANUMA, Yoko OHYAMA, Hiroshi NAGAI, Nobuo YAMAZAKI

1秋田赤十字病院消化器科, 2市立横手病院消化器科, 3秋田厚生医療センター臨床検査科, 4NGI研究所NGI研究所, 5富士フイルムメディカル株式会社超音波事業推進部

1Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center, 4New Generation Imaging Laboratory, New Generation Imaging Laboratory, 5Ultrasound Group, Fujifilm Medical Systems

キーワード :

我々はこれまで,携帯超音波装置の活用に関し多くの視点から報告を行ってきた.それは主に,V scan(GE Healthcare)を用いたもので,その時感じた問題点として,STC(sensitivity time control)を変更できない事,があった.今回,我々は,この点に注目し携帯超音波装置におけるSTC可変の意義を下記の方法で検討し,若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】
富士フィルム社製SonoSite iVizを用い,右上腹部斜走査で肝を介して肝外胆管と門脈右枝を観察する断面を拡大し,STC無変更,と変更後の,肝外胆管と門脈の鮮明度を,正常例(20例(年齢36-87歳(平均(71.2歳))について検討した.また,その際,門脈のカラーの鮮明度に関しても,STC無変更,と変更後の,門脈内のカラーの鮮明度を,正常例(7例(年齢48-66歳(平均(54.3歳))について検討した.
【結果】
1)Bモードに関しては,深部のSTCを2-6dB押える事で,18/20(90%)鮮明度が向上した,2/20(10%)は不変であった.2)門脈内のカラーの鮮明度は4/7(57%)で向上し,3/7(43%)で不変であった.
【まとめと考察】
STCは視野内のゲイン(エコー輝度)を深度により変更する機能で以前より多くの装置に内蔵されていた.組織内を通過すると超音波は減衰するため,超音波装置には,それを補正し浅部と深部のエコー輝度に差が生じない用にあらかじめ設定されている.しかし,その減衰の程度は個体差があるため,この調整とは別に,さらに手元の“つまみ”で手動で微調整も可能である.この“つまみ部“が今回のSTCにあたり,以前の携帯超音波装置では一定条件で不変であったものが,本装置では手動であるが,変更し得るようになっている.右上腹部斜走査で肝を介して肝外胆管と門脈右枝を観察する場合胆嚢の後方にあるため,所謂”後方エコー増強効果“により,この領域がハレーション気味となり観察に苦慮する事がある.今回のSTC変更でこの観察が容易になる事は,携帯超音波診断にとって意味を有する.更に,現在の,携帯超音波装置にはカラードプラ機能が搭載されている.カラードプラのカラー表示は,背景のBモードに依存し,高エコー部の表示を抑え,低エコー部の表示を強調する,という特性がある.今回の検討結果は,前述の胆嚢の後方にあるため,出現する”後方エコー増強効果“により,STC無変更の場合はカラー表示が不鮮明になる,ためと思われた.このように,STCを調整し得ることは,肝外胆管と門脈の観察能を高める事が出来,携帯超音波装置にとって意味があると思われた.