Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓/症例

(S826)

肝細胞癌との鑑別が困難であった肝血管筋脂肪腫の1例

A case of hepatic angiomyolipoma difficult to differentiate from hepatocellular carcinoma

岡本 有紀子, 渡邊 丈久, 楢原 哲史, 田中 健太郎, 徳永 尭之, 川崎 剛, 吉丸 洋子, 立山 雅邦, 田中 基彦, 佐々木 裕

Yukiko OKAMOTO, Takehisa WATANABE, Satoshi NARAHARA, Kentaro TANAKA, Takayuki TOKUNAGA, Takeshi KAWASAKI, Youko YOSHIMARU, Masakuni TATEYAMA, Motohiko TANAKA, Yutaka SASAKI

熊本大学医学部附属病院消化器内科

Department of Gaastroenterology and Hepatology, Kumamoto University Hospital

キーワード :

【症例】
80歳 女性.毎年健診を受けていたが異常を指摘されたことなく,肝に基礎疾患を認めない.健診の腹部超音波検査にて肝左葉に32mm大の腫瘤性病変を指摘された.肝細胞癌が疑われ,精査加療目的に当院へ紹介受診となった.
【経過】
血液検査では肝機能異常や腫瘍マーカーの上昇はなく,HBs抗原陰性,HCV抗体陰性であった.腹部超音波検査では背景肝はほぼ正常で,肝S1に35mm大の内部不均一な高エコー腫瘍を認めた.腫瘍は辺縁にbright loop様の高エコー帯を有しており,脂肪化を伴った高分化型肝細胞癌の中心部に中~低分化型肝細胞癌が発育しているものと考えた.腹部造影CT検査で腫瘍は早期に不均一に濃染され,門脈相および平衡相でwash outを認めた.腹部dynamic MRI検査でも腫瘍は早期に内部が不均一に濃染され,門脈相および平衡相でwash outを認めた.T1強調画像in phaseで低信号,opposed-phaseでも脂肪抑制はほとんど認めず,T2および拡散強調画像では高信号,肝細胞相では低信号を呈していた.IVR-CT検査では同部位はCTA早期相で濃染し,CTA後期相ではwash outを認めた.以上より,肝細胞癌と診断し,腹腔鏡下肝尾状葉切除術を施行した.病理検査では,好酸球性顆粒状の細胞質を持つ大型細胞や脂肪細胞が管腔構造を形成し増殖していた.免疫組織染色ではHMB45陽性,MelanA陽性,S-100はごく少数の細胞ではあるが陽性であり,肝血管筋脂肪腫と診断した.
【考察】
肝血管筋脂肪腫(angiomyolipoma:AML)は,血管,平滑筋細胞,成熟脂肪組織などが様々な割合で混在する間葉系の良性腫瘍で,腫瘍を構成する組織の割合により,画像上多様な形態を呈する.免疫組織学的には,平滑筋成分においてhomatrophine methylbromide-45(HMB-45)が陽性となるが,特に脂肪成分の少ない筋腫型では肝細胞癌と類似の所見となることがあり,本症例は各種画像検査の結果,術前に肝細胞癌と診断し,外科的切除を行った.IVR-CT検査の所見を遡及的にみると,CTA早期相で腫瘍濃染後に近傍の肝静脈が造影され,腫瘍の流出血管であると考えられた.早期静脈還流は肝血管筋脂肪腫で50~80%の頻度で認められる特徴的所見である.肝細胞癌における頻度は7~8%と比較的少なく,特に12cm以上の大腫瘍で認められる場合が多いため,3cm前後の小型の肝細胞癌で認めることは稀である.本症例では肝に基礎疾患を認めず,腫瘍からの早期静脈還流が考えられる点で典型的肝細胞癌と異なっていた.以上2点に着目すれば,本症例でも肝血管筋脂肪腫を鑑別疾患の一つに挙げることが可能であったと考えられる.
【結語】
超音波検査を含めた画像所見で,肝細胞癌との鑑別が困難であった肝血管筋脂肪腫の一例を経験した.早期静脈還流像を呈する肝多血性腫瘍の鑑別においては,肝血管筋脂肪腫も念頭に置く必要がある.