Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 循環器
心筋症その他

(S813)

ジソピラミドにより左室流出路圧較差が著明に軽減したS字状中隔の一例

Beneficial Effect of Disopyramide on Left Ventricular Outflow Tract Pressure Gradient With Sigmoid Septum

荒木 亮, 橋本 健太, 佐藤 芙美, 高橋 邦彰, 山根 治野, 田中 慧, 宮崎 直子, 山田 貴之

Ryo ARAKI, Kenta HASHIMOTO, Fumi SATO, Kuniaki TAKAHASHI, Haruya YAMANE, Kei TANAKA, Naoko MIYAZAKI, Takayuki YAMADA

大手前病院循環器内科

Department of Cardiology, Otemae Hospital

キーワード :

症例は76歳,女性.既往歴として高血圧はあったが,心疾患の既往はなかった.数週間前より徐々に労作時呼吸困難を認め,当院紹介受診となった.経胸壁心エコー検査ではS字状中隔であり,左室流出路にモザイクエコーを認め,左室流出路の最大血流速度5.5m/s,最大圧較差123mmHgであった.大動脈弁の開放は良好で,非対称性左室肥大(ASH)や収縮期僧帽弁前方運動(SAM)を認めず,心電図でも左室高電位やST-T変化を認めなかったため,S字状中隔による左室流出路狭窄と判断した.胸部レントゲンでは肺鬱血や胸水貯留を認めなかった.第1病日よりビソプロロール2.5mg/日を開始したが,左室流出路の最大圧較差は第6病日で102mmHgと依然として高値であったため,同日よりビソプロロール5mg/日へ増量した.しかし第10病日でも左室流出路の最大圧較差は118mmHgと高値であったため,同日よりジソピラミド300mg/日を追加したところ,第14病日に左室流出路の最大圧較差は18mmHgまで改善した.それに伴い労作時呼吸困難も軽減し,軽快退院となった.本症例では左室拡張末期径が37mmと小さく,左室が扁平な形状をしていたため,S字状中隔の進行とともに左室流出路狭窄を生じた可能性が考えられた.S字状中隔は加齢による生理的な変化であり,臨床的意義は少ないとされるものの,一部の症例では閉塞性肥大型心筋症における左室流出路狭窄と同様の病態を呈する場合もある.閉塞性肥大型心筋症における治療と同様に,ジソピラミドにより左室流出路圧較差が著明に軽減したS字状中隔の一例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.