Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 循環器
心筋症その他

(S811)

急性虚血性僧帽弁逆流による心不全を繰り返した虚血性心筋症の一例

Ischemic Heart Failure with Acute Mitral Regurgitation

豊川 望, 大倉 宏之, 鴨門 大輔, 野木 真紀, 中田 康紀, 磯島 琢弥, 岡山 悟志, 川上 利香, 斎藤 能彦

Nozomi TOYOKAWA, Hiroyuki OKURA, Daisuke KAMON, Maki NOGI, Yasuki NAKATA, Takuya ISOZIMA, Satoshi OKAYAMA, Rika KAWAKAMI, Yoshihiko SAITOU

奈良県立医科大学附属病院第1内科

First Department, Nara Medical University

キーワード :

【症例】
80歳代,男性.
【主訴】
呼吸困難
【現病歴】
2型糖尿病で他院に通院していた.喘鳴を伴う呼吸困難を認め他院に入院し,急性心不全と診断され加療が行われた.しかし入院中に呼吸状態の悪化を認め,気管挿管を施行され当科に転送された.
【入院時現症】
血圧 150/76 mmHg,脈拍95 /min.心音は左胸骨左縁第4肋間と心尖部にそれぞれ最強点を置くLevine 5の拡張期雑音とⅢ音を聴取した.肺音は両側下肺野に湿性ラ音を聴取し,両下腿に圧痕性浮腫を認めた.心電図は前胸部誘導で異常Q波を認めた.心エコー図では,EF:25 %と前壁から中隔の壁運動の低下を認め,LVOT VTI(Left ventricular outflw tract velocity time integral):14.07 cmと低心拍出であった.また4度の僧帽弁逆流を認め,E/A:1.28,E/e’:31.6と左房圧の上昇と拡張障害も認めた.そのため,虚血性心筋症によるうっ血性心不全と判断し,カルペリチドとフロセミド,カルベジロールの投与を開始した.しかし,利尿が得られず血圧も低値であったことから低心拍出量症候群と判断し,ドブタミンを開始した.第3病日に抜管し,カルベジロールを増量したところ,第5病日に呼吸苦が増悪した.心エコー図では,E/A:2.6,E/e’:57.3と左房圧の上昇を認め,LVOT VTI:6.56 cmと低下しており,心不全と低心拍出量症候群の増悪と考えた.そのためカルベジロールを減量しドブタミンを開始した.第7病日に左回旋枝に対してPCI(Percutaneous Coronary Intervention)を施行したところ,E/A:2.85,E/e’:27.4,LVOT VTI:15.34 cm,MRは3度まで改善し,ドブタミンを中止した.第22病日に右冠動脈に対してもPCIを施行後,E/A:0.7,E/e’:21.8,MRは2度に改善し,呼吸苦や下腿浮腫も消失したため,第37病日に退院した.
【考察】
本症例は急性虚血性僧帽弁逆流による心不全を繰り返した虚血性心筋症の一例である.心不全の病態把握にはE/AやE/e’が有効であるといわれており,本症例は低左心機能であり心不全加療に難渋したが,経時的に頻回に測定を行うことで心不全の病態把握を行うことができた.また心機能は心エコー図でLVOT VTIも経時的に測定することで把握することができ,PCIによる心機能改善も観察することができた.重症心不全では,経時的に心エコー図で心機能と病態を評価する必要がある.