Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 循環器
心機能・新技術

(S806)

左室拡張機能障害評価における心エコー図と心電図同期心筋SPECT(GMPI)との関係性

Relationships of assessment of LV diastolic dysfunction between Echocardiography and gated SPECT myocardium image(GMPI)

丹羽 文彦, 堀 貴好, 後藤 繁優, 橋ノ口 由美子, 澤 幸子, 須佐 知子, 北洞 久美子, 森田 康弘, 坪井 英之

Fumihiko NIWA, Takayoshi HORI, Shigemasa GOTOU, Yumiko HASHINOKUCHI, Sachiko SAWA, Tomoko SUSA, Kumiko KITAHORA, Yasuhiro MORITA, Hideyuki TSUBOI

1大垣市民病院診療検査科, 2大垣市民病院循環器内科

1clinical research, Ogaki Municipal Hospital, 2cardiolgy, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

[背景]
左室駆出率が保たれた心不全(Heart failure with preserved EF:HFpEF)の概念が初めて報告されてから30年近くが経つが,いまだに診断,病態生理,治療法などで議論されている部分が多い.HFpEFの原因の多くは左室拡張機能障害とされており,加齢,基礎疾患(高血圧,糖尿病など),左室の異常(心筋肥厚など),左房の異常(左房拡大,繊維化など)が複雑に絡み合って起こる.左室拡張機能障害の診断は一般的に非侵襲的な2次元心エコー図のドプラ波形で評価されている.しかし,評価項目・方法が多岐にわたり,カットオフ値も論文ごとに異なるため,検査が煩雑になり,診断に苦慮するケースも少なくない.
2016年4月にAmerican Society of Echocardiography(ASE)とthe Europian association of cardiovascular imaging(ECAVI)の合同で2次元心エコー図による左室拡張能評価法に関するガイドラインが発表された.その中で左室拡張能評価の有用な指標[カットオフ値]として,中隔および側壁の僧房弁輪移動速度(e’)[中隔:7cm/sec<,側壁:10cm/sec<],左室急速流入器波(E波)と e’(中隔と側壁の平均)の比E/e’[>14],左室容積係数[>34ml/m2],三尖弁逆流のピーク速度[>2.8m/sec]の4つが挙げられている.正常な左室駆出率(50%≦)を有する症例では前述した4つの指標のうち満たす指標が半分以下であるなら左室拡張能は正常,半分であるなら境界域,半分以上満たせば左室拡張能不全と分類できるとされている.また,左室駆出率が低下した(50%>)症例ではE/A(A:心房収縮期波)を含めた5つの指標で,左室充満圧の評価が可能とされている.一方,GMPIでは,最大充満速度(PFR),最大充満速度到達時間(TPFR),早期平均充満速度(1/3MFR)を求めることができる.
[目的]
ガイドラインに沿って左室拡張機能障害の評価を2次元心エコー図で行い,GMPIから得られる評価指標との関係を比較検討した.
[対象]
虚血性心疾患疑いにて2次元心エコー図と安静時GMPIを同時期(1か月以内)に施行し左室収縮能が保たれた(LVEF≧50%)例で,GMPIでR-R間隔の不整および心エコーで左室中隔または側壁の壁運動低下を認めた例や画像不良例を除外した連続96例で内訳は男性53例,女性43例,年令50~92才,平均77.6±8.1才である.GMPIによるLVEFは平均63.7±12.9%であった.
[結果]
対象を2次元心エコー図での左室拡張能評価法のガイドラインに沿って分類すると,左室収縮能が保たれた(LVEF≧50%)96例の内訳は①『normal dyastolic function』が43例,②『Indeterminate』が37例,③『Diastolic Dysfunction』が16例であった.
2次元心エコー図での左室拡張障害の重症度分類とGMPIの各指標との間には,有意な相関は得られなかった.
[考察]
左室拡張能指標では相関が得られなかったのは,2次元心エコー図での左室拡張障害は左室充満圧を反映しているものの,GMPIによる左室時間容積曲線から算出される拡張能指標は,左室弛緩能を反映していると考えられた.