Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 循環器
その他 1

(S804)

TAVI中に体外式ペーシングリードによる右室穿孔から心嚢液貯留を来たした一例

A Case with Pericardial Effusion Caused by Temporary Pacing Lead during Transcatheter Aortic Valve Implantation

河田 祐佳, 山田 晶, 星野 直樹, 星野 芽以子, 高田 佳代子, 天野 健太郎, 杉本 邦彦, 高木 靖, 村松 崇, 尾崎 行男

Yuka KAWADA, Akira YAMADA, Naoki HOSHINO, Meiko HOSHINO, Kayoko TAKADA, Kentaro AMANO, Kunihiko SUGIMOTO, Yasushi TAKAGI, Takashi MURAMATSU, Yukio OZAKI

1藤田保健衛生大学循環器内科, 2藤田保健衛生大学心臓血管外科, 3藤田保健衛生大学病院臨床検査部

1Department of Cardiology, Fujita Health University, 2Department of Cardiovascular Surgery, Fujita Health University, 3Clinical Laboratory, Fujita Health University Hospital

キーワード :

症例は85歳,女性.201X年9月に冷汗を伴う呼吸苦が出現し,近医へ救急搬送となった.高度の大動脈弁狭窄症(AS)に伴ううっ血性心不全と診断され,加療の後,ASに対する外科的治療を目的に当院へ紹介となった.前医での冠動脈造影検査では冠動脈に明らかな有意狭窄はなく,当院での経胸壁心エコー図検査で大動脈弁通過血流速は最高 5.2 m/s,大動脈弁平均圧較差 65mmHg,大動脈弁弁口面積は0.42cm2/m2とAS はvery severeであった.フレイルティーが極めて高く,体格も小さいこと(身長:131.8cm,体重:27.6kg),および85歳と高齢であり,ハートチームカンファレンスにてTAVIの適応と判断され,201X年12月にTAVIを施行する方針となった.手術当日,右橈骨動脈より動脈圧ラインを確保後,全身麻酔下に右内頸静脈より中心静脈カテーテルを留置した.そして同部位より体外式ペーシングリードを透視下で挿入し,右室心尖部に留置した.リード留置手技はスムーズに施行された.その後,経食道心エコープローブを挿入すると,右室心尖部および心膜横洞部に軽度心嚢液貯留が認められた.術前2ヶ月前の経胸壁心エコーでは明らかな心嚢液貯留は認めていなかった.入室後の血圧は概ね120-130mmHg台で大きな変動はなく,明らかな心拍数の増加は認めなかった.左冠動脈の入口部の高さが低く,大動脈弁左冠尖に粗大な石灰化があることから,valve留置による冠動脈閉塞リスクを考慮し,留置前に左前下行枝にprotectionのwireを留置した.この辺りから心嚢液のわずかな増加を認めたが,バイタルの異常はみられず,TAVIの手技はそのまま続行された.しかし当初は右室心尖部だけであった心嚢液がさらに右房や左室側にも観察されるようになり,緩徐に増加傾向と判断された.さらに経胃短軸像で右室心尖部から心膜腔へ向かうcolor jetが認められ,手技開始時の体外式ペースメーカー留置の際に右室壁を損傷した可能性が高いと考えられた.SapienIII 23mm留置後は四腔像で右室前面の心嚢液は幅6mmから13mmまで増加し,明らかな心嚢液の増加と判断され,エコーガイド下で心窩部よりドレナージチューブを心嚢内に挿入,血性の心嚢液を約200mlドレナージした.その後の新たな心嚢液の貯留は認めなかった.全身麻酔下であり,輸血もしていたことから,心タンポナーデに伴うバイタルの異常があまり顕性化せず,経食道心エコープローブの挿入を体外式ペースメーカー留置後に行ったことも,診断に難渋した要因と考えられた.本症例の経験を踏まえ,今後の課題としてはペースメーカー挿入前に経食道心エコープローブを留置することが重要であると考えられた.