Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 基礎
超音波計測一般

(S793)

トランスデューサーと駆動回路を一体化したHIFU用システムの研究

The study on HIFU system integrationg transducer and driving circuit

竹内 秀樹, 葭仲 潔, 東 隆

Hideki TAKEUCHI, Kiyoshi YOSHINAKA, Takashi AZUMA

1東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻流体工学研究室, 2産業技術総合研究所健康工学研究部門セラノスティックデバイス研究グループ, 3東京大学大学院医学系研究科疾病生命工学センター

1School of Engineering Department of Mechanical Engineering Fluids Engineering Laboratory, The University of Tokyo, 2Health Research Institute Theranostic Device Research Group, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 3Center for Disease Biology and Integrative Medicine, The University of Tokyo

キーワード :

【背景】
HIFU(High Intensity Focused Ultrasound)は従来の外科的治療に比べて低侵襲で,放射線や粒子線治療に比較して小型でハンドリングが良いため,今後の治療ツールとして期待されている.一方,HIFUは超音波のエネルギー応用であり,そのトランスデューサーの駆動には,大きな電力を供給しなければならない.従って,その駆動回路も熱が発生し,排熱のためシステム全体が大きくなり,超音波の特徴の1つでもある簡便さも損なわれている.一昨年の本学術集会に於いて,伝送ケーブルを無くし,トランスデューサーを直接駆動することによって,ケーブル付きでは27%程度だった電力伝送効率を,ケーブルを無くして直接駆動することによって約70%に改善することを示した.今回,この効率を80%以上に高めたことによって駆動回路自体の発熱が抑えられ,大きな放熱構造も必要がなくなったため,小型化が実現でき,回路全体をトランスデューサーの背面に実装することを可能としたので報告する.
【目的】
電力伝送効率を向上させることでシステムを小型にしたHIFU照射システムの開発
【方法】
一昨年の本学術集会で示した駆動回路には感電リスクの低減と,駆動波形の振幅変調の簡便さから,トランス結合方式を採用した.一般的に駆動回路の電力効率を上げるためにはスイッチング方式が使われている.しかし従来の回路は,マクロ的に見ると電源電圧を超音波の励振周波数でスイッチングしているだけなので,負荷(超音波素子)のリアクタンス成分に依って生じた無効電力(超音波の発生に寄与しない電力)は電源ユニットに戻り,電源を過熱させるため,トータルで見たときには省エネルギーにはなっていない.コイルを直列に入れることによって直列共振回路を形成し,無効電力の発生を抑える方法も考案されているが感電のリスクは減少しない.一方,電力効率を上げるため,トランス結合方式の駆動波形も矩形波を使っている.これには多くの高調波が含まれている.電力は,電圧の実効値の2乗にAdmittanceを乗算することで算出される.つまり,電力はAdmittanceに比例する.Admittanceの内,実数部のConductanceでエネルギーが消費される.ケーブルを介すと周波数が高くなるに従ってConductanceの値が上昇する.トランスデューサー単体のConductance特性は周波数が共振周波数より高くなるとゼロに漸近する.つまり,矩形波の高調波成分はケーブルで消費される.ケーブルには直流抵抗と共に誘電体損,銅損,磁性体損などの損失がある.従ってケーブルが無ければ電力効率が上げられる.
今回,回路に使う半導体素子の耐電圧と流せる電流,過渡速度,および大きさと,トランスの巻き数比とコアー材の飽和磁束密度,駆動するトランスデューサーの素子のインピーダンス(素子構造と面積に依存),HIFUの音場に出現するグレイティングローブの許容できる大きさと焦点移動距離などを総合的に検討し,最適化を試みた.
しかしながらトランス結合方式は,トランスデューサーのインピーダンスに整合させる方式なので,回路は専用に設計し,駆動回路とトランスデューサーは一体で組み込まなければならないので,汎用性には欠ける.
【結果】
トランスデューサーの背面に駆動回路を実装したと共に,位相制御回路も組み込み,密閉構造にすることにより,システム全体の水中使用を可能とした.電力伝送効率は80%以上を達成した.
【謝辞】
本研究の一部は埼玉県産学連携研究開発プロジェクトの支援を受けたことを示し,謝意を表します.