Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 基礎
超音波計測一般

(S792)

超音波デモジュレーション変位ベクトル計測法の精度

Accuracy of ultrasonic demodulation tissue displacement vector measurement

炭 親良, 濱田 励一, 村岡 和樹

Chikayoshi SUMI, Reiichi HAMADA, Kazuki MURAOKA

上智大学理工学部情報理工学科

Dept of Info & Commun Sci, Sophia University

キーワード :

【目的】
超音波エコー法に基づく組織変位ベクトル計測法として,多次元クロススペクトル位相勾配法や多次元自己相関法,多次元ドプラ法を開発して来た.これらは任意方向に交差する波動を用いた横方向変調時に実施できる.その他,多次元自己相関法や多次元ドプラ法において成立するドプラ連立方程式をデモジュレーション(複素信号の積と共役積)を用いて解く方法[Rep Med Imag, 4, 39, 2011]を開発したが,これは交差する波動が深さ方向の直交座標軸に対して対称であることを仮定して用いる方法である.本稿では,実際に生成した横方向変調において,その仮定が齎す誤差について考察した.
【対象と方法】
寒天ファントムを対象としてリニアアレイ型探触子(7.5MHz)を用いた.深さ方向の軸に対して左右対称に0°~±45°まで1°刻みで偏向ビームを開口面合成により生成し,その都度,多次元自己相関法とデモジュレーション法の各々を用いて観測される深さと横の方向の変位成分の精度を統計的に比較した.
【結果と考察】
変位の観測結果において,デモジュレーション法の結果はばらつきが大きく,平均値も異なり,精度は低かった.図1に,設定した横方向周波数対,横方向変位の平均値とばらつきの結果を示す(他は略).
【結論】
デモジュレーション法の精度が低い理由の一つとしてアレイ素子の指向性の偏りにより実際の交差波動が深さ方向の軸に対して対称ではなかったことがある.つまり,デモジュレーションの結果の複素信号が実際に生成された交差波動が対称となる軸を座標軸に持つ座標系における変位成分を表すものと理解し,変位又は周波数を補正する必要がある.また,実のところ散乱や減衰の影響で交差波動の周波数は異なるため複素信号が表す座標系は直交せず,同様に補正処理する必要がある.この補正を行わない場合に,瞬時周波数や重心周波数を求めない場合は演算量は略同じであるが,それらの周波数を求めて各々の方法において高精度に観測する場合(上記の結果)は多次元自己相関法の方が多い.しかし,多次元自己相関法と同精度を得るべくこの補正を行うと,周波数を求める場合も求めない場合も計算量はかなり多くなる.デモジュレーション法ではナイキスト定理に基づき超音波周波数の4倍の帯域が必要となるが,エコー信号のサンプリング時のナイキスト周波数帯域のままにて計算できる有効な周波数変調法やアナログ検波法も併せて報告する.