Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 その他
眼科その他

(S781)

局所多発Bラインを認めた溺水の1症例

A case of submersion detected focal multiple B-lines

福原 信一, 土井 圭, 濱田 佳奈, 正木 直子, 大橋 玉置

Shinichi FUKUHARA, Kei DOI, Kana HAMADA, Naoko MASAKI, Tamaki OOHASI

兵庫県立淡路医療センター小児科

Department of Pediatrics, Awaji Medical Center

キーワード :

【はじめに】
溺水は年齢を問わず,重要な救急疾患の一つである.胸部評価の画像検査としては,胸部レントゲン検査が標準と位置付けられており,小児で異常所見が得られれば入院適応となる.超音波検査については,救急領域では,過去約20年間の知見を経て,肺の異常病変を捉えることが可能と考えられているが,溺水症例における超音波検査所見に関しては知見が乏しい.
【症例報告】
症例:4歳 男児.
主訴:溺水.
既往歴:特記事項なし.
現病歴:プールで保護者が目を離していた.しばらくして,プール内で手足をバタバタさせている児に気付いた.近づいた時には水没しており,水中から引き上げた時には意識と呼吸はなく,皮膚は蒼白で全身脱力していた.背部巧打後に嘔吐し,約40秒に体動が出現した.8分後の救急隊接触時は,喘鳴を認めSpO2は90-95%,疼痛への反応あり,約30分後に意識清明となった.
身体所見(発症後約40分):意識清明,呼吸数32/分,心拍数108/分,体温36.8度,SpO2 97%(室内気),呼吸音・胸郭運動に異常所見を認めず,四肢冷感あり,CRT2秒,神経学的局所異常所見なし.
静脈血液ガス:pH 7.417 PvCO2 37.7 HCO3-23.8 BE 0.0.
胸部レントゲン検査:異常所見を認めず.
肺超音波検査:右前胸部に局所多発Bラインを認めた.他部位には異常所見を認めなかった.
臨床経過:救急外来にて6時間経過観察し,呼吸状態の悪化が見られないことを確認し,外来フォローとした.以降病状の悪化を認めなかった.
【考察】
溺水における肺超音波検査の報告は,成人に関しては1例の症例報告のみで,小児に関しては報告がなく,その所見は未確定である.肺水腫やARDSなど肺組織の密度が高まる病態では,超音波検査においては,多発Bラインとして検出可能と考えられている.心原性肺水腫の検出に関しては,胸部レントゲン検査よりも優れるとの報告がある.中等度以上の病変に関しては,病変の強さに応じて超音波検査での多発Bラインが増加することが報告されている.本症例は,溺水としては軽症であり,胸部レントゲン検査では異常を認めなかったが,超音波検査所見では異常を検出し,溺水による影響が示唆された.溺水症例においてどのような超音波検査所見が得られるかについては,今後の検討が望まれる.