Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 運動器
病態へのアプローチ

(S773)

大臀筋膿瘍についての検討

Major Gluteal Muscle abscess

鈴木 正敏, 土田 隼太郎, 廣田 健児, 清永 英利, 小野崎 智之, 細田 誠弥, 加地 正明, 斎尾 武郎

Masatoshi SUZUKI, Shuntarou TSUCHIDA, Kenji HIROTA, Hidetoshi KIYONAGA, Tomoyuki ONAZAKI, Seiya HOSODA, Masaaki KAJI, Takeo SAIO

1フジ虎ノ門整形外科病院外科, 2フジ虎ノ門整形外科病院整形外科, 3フジ虎ノ門整形外科病院内科

1surgery, Fujitoranomon Orthopaedic Hospital, 2Orthopaedics, FujiToranomon Orthopaedic Hospital, 3medicine, FujiToranomon Orthopaedic Hospital

キーワード :

【はじめに】
糖尿病の症例やステロイド治療中の症例で,腸腰筋膿瘍が合併することがあるが,大臀筋膿瘍も合併する可能性があるので,これらの症例の画像診断を再検討して,それらの,発生,進展について検討したので,報告する.
【対象】
肛門周囲膿瘍,複雑性痔瘻に起因する臀部(皮下)膿瘍と違って,(大臀筋断裂を伴う)大臀筋内,または大臀筋と中臀筋の間の膿瘍を対象とした.
【症例1】
45才,男性,既往症はC型肝炎(とDM).左臀部痛で2011年に受診した.USで左大臀筋断裂を伴う左大臀筋膿瘍,10cm大と診断して,USガイドドレナージをおこなった.その後,右大腿前面の腫れを訴えたので,USで,1cm幅程度の線状の液体貯留腔を認めたので,これもUSガイドドレナージを施行した.いずれも保存的に洗浄にて,完治した.起因菌はMSSAであった.
【症例2】
32歳,男性,2015年2月左臀部をぶつけられ受傷.近医で2回ブロック注射を受ける.5月紹介で当院を受診.左大臀筋膿瘍 7-8cm大を認め,USガイドドレナージを行った.その後も痛みと熱があり,MRI検査で,左腸腰筋膿瘍が数珠状の連なり,小転子の上から大腰筋内に4本のドレナージを施行した.起因菌はMSSAであった.ドレーンの洗浄により保存的に完治した.
【症例3】
は,74才,女性,2015年12月左膝痛を患っていたので,近医でブロック注射を受ける.2016年1月末左臀部痛で近医受診.1月20日頃入院.炎症所見が高度になり,腰椎硬膜外膿瘍の診断で,2月2日当院に転院した.WBC-12400,CRP-17.2.US,CT,MRIで,左梨状筋膿瘍,左大臀筋膿瘍,左内転筋膿瘍,左腸脛靭帯に沿う膿瘍20cm長を認めたので,順次USガイドドレナージ5本を行った.ドレーンの造影により,上記4つの膿瘍腔は,左大腿骨頸部後付近で交通していた.いずれもドレーン洗浄にて,約2か月で,完治したが,リハビリに約3か月かかり,約5か月で退院した.左腸腰筋付近の膿瘍は2cm大と小さく自然退縮した.
【考察】
症例2は左臀部打撲が左大臀筋断裂に関係する可能性があった.症例2,3はブロック注射が原因している可能性があった.3症例の連結する膿瘍腔は,腸腰筋に付着する小転子と,梨状筋が付着する大転子とを介して,大腿骨頸部後面で,連結して,上または下方向に広がったと考えられた.以前,結核で脊椎カリエスから広がる流注膿瘍gravitation abscessが,骨盤腔,股関節付近に広がり,排膿していた症例がみうけられたと伝えられているが画像診断はほとんど残存しない.現在では,MSSAまたはMRSAを起因とする,腰椎椎体炎,椎間板炎に関連する腸腰筋膿瘍から,梨状筋も関与して,大腿骨大小転子部後面を介して,大腿内転筋,腸脛靭帯に至る流注膿瘍が完成する可能性があり,流注膿瘍のinner routeとして,腸腰筋と梨状筋と大腿骨頸部とが重要と考えられた.