Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 血管
動脈疾患

(S766)

浅側頭動脈にMonckeberg型の石灰化を認めた巨細胞性動脈炎の3症例

Three Cases of Giant Cell Arteritis with Monckeberg Type Calcification in the Superficial Temporal Artery

天野 里江, 鳥居 裕太, 西尾 進, 平田 有紀奈, 松本 力三, 楠瀬 賢也, 山田 博胤, 佐田 政隆

Rie AMANO, Yuta TORII, Susumu NISHIO, Yukina HIRATA, Rikizo MATSUMOTO, Kenya KUSUNOSE, Hirotsugu YAMADA, Masataka SATA

1徳島大学病院超音波センター, 2徳島大学病院循環器内科, 3徳島大学大学院医歯薬学研究部地域循環器内科学

1Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, 3Department of Community Medicine for Cardiology, Tokushima University Graduate School of Biomedical Sciences

キーワード :

【はじめに】
巨細胞性動脈炎(GCA)は,古典的な臨床的症状(頭痛,視力障害など)を呈するClassical GCA以外に,高安動脈炎と類似所見を呈するLarge vessel GCA,視力障害など虚血性症状のみで,炎症所見に乏しいOccult GCA,非特異的な炎症所見のみで,虚血性症状を欠くSilent GCAに分類される.GCAの好発部位は浅側頭動脈で,超音波所見では動脈周囲の低輝度肥厚像(halo sign)が知られている.今回,浅側頭動脈に石灰化を認めたGCAの3症例を経験したので報告する.
【症例1】
74歳,男性.主訴は発熱,側頭部痛.難治性中耳炎とリウマチ性多発筋痛症の既往がある.臨床的にGCAが疑われ,超音波検査が依頼された.両側浅側頭動脈起始部の内膜側に石灰化を認め,右側は末梢側にhalo signを認めたが,左側ではhalo signを認めなかった.右側浅側頭動脈生検が施行され,病理所見では中膜の石灰沈着を認めたが,炎症細胞の浸潤や巨細胞は認めなかった.病理所見では血管炎の所見は認めなかったが,GCAの診断基準を満たすことから,Silent GCAと診断された.
【症例2】
82歳,女性.主訴は倦怠感と体重減少.左上葉肺腺癌術前のPET-CT検査で上行大動脈の拡大とFDG集積を認め,血管炎が疑われた.無症状であるが,臨床上はGCAが疑われた.超音波検査では,両側浅側頭動脈の内膜側に石灰化と壁肥厚を認めたが,明らかなhalo signは認めなかった.右側浅側頭動脈生検が施行され,病理所見では外膜および中膜の一部にリンパ球や組織球,多核巨細胞の浸潤があり,石灰化も認めた.Silent GCAかつLarge vessel GCAと診断された.
【症例3】
69歳,男性.主訴は不明熱,側頭部痛,視力障害.臨床上,GCAが疑われた.超音波検査では,両側浅側頭動脈起始部の内膜側に石灰化および末梢側にhalo signを認めた.左側浅側頭動脈生検が施行され,病理所見では,全周性に炎症細胞浸潤を認め,類上皮細胞や少数の多核巨細胞がみられた.Classical GCAと診断された.
【まとめ】
病理組織学的には,本例のように浅側頭動脈の中膜に石灰化(Monckeberg型)を有する症例が報告されている.高齢者でも同様に浅側頭動脈に石灰化を認めることもあるが,アテローム性動脈硬化症では中膜の石灰化は少なく,慢性的な炎症による変化である可能性が示唆されている.GCAの超音波所見としてhalo signは広く知られているが,石灰化病変も慢性的な炎症を反映する一所見の可能性がある.