Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 甲状腺
甲状腺その他

(S751)

当科における甲状腺癌の超音波によるサーベイランスの実際

Surveillance of thyroid cancer in our department

下出 祐造, 高岡 勇稀, 川上 理, 能田 拓也, 辻 裕之

Yuzo SHIMODE, Yuki TAKAOKA, Osamu KAWAKAMI, Takuya NODA, Hiroyuki TSUJI

金沢医科大学頭頸部外科学講座

Head and Neck Surgery, Kanazawa Medical University

キーワード :

 甲状腺腫瘍は術前に良悪性判定が困難な濾胞性病変や嚢胞などが大半を占め,まれに認める悪性腫瘍のほとんどは生命予後の良い乳頭癌である.そのため初診時はまず超音波所見を基に必要性を検討した上で穿刺吸引細胞診を行う.乳頭癌が疑われれば引き続き治療方針が決まるが,それ以外の結果では超音波検査で広範浸潤濾胞癌を疑う所見やまれに腫瘍マーカーで判明する髄様癌などを除外した症例の多くはまず経過観察によりサイズ増大など所見の変化をとらえることが必要となる.そのため外来診療業務は超音波検査所見の評価と以前の所見との比較作業が中心となり,いかに重要な所見を効率的に把握して評価するか,さらに手術となれば病状の変化をわかりやすく効率的に患者や家族へ説明することが重要となる.またリンパ節転移が好発する乳頭癌の場合,転移評価における超音波検査はその所見が特徴的で大変有用である.術前はリンパ節転移の有無だけでなくその局在についても評価して過不足のないように頸部郭清術を施行する.たとえ術前に転移と診断がつかないリンパ節でも,長期経過観察中に増大をきたす場合も珍しくないため,術前には非転移性と判断されたリンパ節もその局在とサイズを記録し術後の変化を把握するために基礎情報を作成しておくことが重要となる.当科は甲状腺外科とともに頭頸部外科も標榜しており,常に甲状腺だけでなく耳下腺や顎下腺までくまなく探索する必要があり,定型的な超音波検査手順を作り評価することを心がけている.リンパ節転移について本邦の診断,治療成績等を海外と比較する際の課題として日本甲状腺癌取扱い規約とAJCCにおける所属リンパ節分類の表記番号が異なることがある.まれに両者が合併している症例も経験することもありいずれの記載をするかは問題となる.
 以前より当科では図示を中心とした頸部超音波検査の報告に取り組んでいる.具体的には前回検査で記載した報告書を印刷し,超音波検査室に貼付してその所見をみてから頸部探索を行う.検査結果は前回と今回の報告書の両方をコピーして患者に提示しその違いを図示所見から説明して手渡している.同席できなかった家族への説明も容易となり,またこの書面をファイルにして患者に管理してもらうことで,自身の病態認識を促すことも可能になると思われる.頸部郭清術を行う際の郭清範囲は術後再発の検索に重要な情報であり,超音波検査担当と手術情報を共有することで検索範囲を加減でき作業の効率化につながる.また前述の表記名称についても局在を図示することで名称に依存せず記載できるので両者へ同時に対応が可能となる.当科が以前に報告した一側外側区域リンパ節転移における郭清範囲の検討において,転移リンパ節最大径/原発巣最大径がリンパ節転移の範囲と相関関係を示したことを報告したが,それには術前に作成した報告書から詳細なリンパ節局在を把握して術後にリンパ節を適切にマッピングすることで精度の高い評価が可能となった背景がある.
 今回のテーマであるサーベイランスの意味は,疾病の発生状況や変化を継続的に監視して対策のためのデータを体系立てて収集,分析することである.甲状腺癌診療において超音波検査の有用性を生かしてそれらの情報の継時的変化を効率的に評価し情報の蓄積による分析を行う上で,当科が行っている超音波検査の報告形式とその運用は有用であると考えられ,甲状腺癌の超音波によるサーベイランスについて当院での取り組みを報告する.