Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 甲状腺
甲状腺

(S749)

フラクタル次元を用いた甲状腺超音波像の定量的数理解析

Quantitative Mathematical Analysis of Thyroid Ultrasound Using Fractal Dimension

小松 史哉, 貴島 祥, 佐々木 陽典, 前田 正, 石井 孝政, 瓜田 純久, 中嶋 均, 丸山 憲一, 原田 昌彦, 坪井 久美子

Fumiya KOMATSU, Sho KIJIMA, Yosuke SASAKI, Tadashi MAEDA, Takamasa ISHII, Yoshihisa URITA, Hajime NAKAJIMA, Kenichi MARUYAMA, Masahiko HARADA, Kumiko TSUBOI

1東邦大学医療センター大森病院総合診療内科, 2東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, 3東邦大学医療センター大森病院糖尿病・代謝・内分泌科

1Department of general medicine and emergency care, Toho university Omori Medical center, 2Department of Clinical Functional Physiology, Toho university Omori Medical center, 3Division of Diabetes, Metabolism and Endocrinology, Department of Internal Medicine, Toho university Omori Medical center

キーワード :

【目的】
甲状腺疾患診断ガイドライン2013において,甲状腺疾患はバセドウ病,慢性甲状腺炎(橋本病),無痛性甲状腺炎,亜急性甲状腺炎に分類して診断ガイドラインが示されている.超音波像はそれぞれの病態を反映しているが病期によって異なりその比較は困難である.今回定量的に解析するためフラクタル次元を算出し疾患の特徴を数学的に検討した.
【方法】
対象は当院総合診療科を受診し,超音波検査を実施した橋本病35例,バセドウ病7例,亜急性甲状腺炎4例,びまん性腫大10例,腺腫様甲状腺腫20例,正常33例.超音波画像をフラクタル解析ソフトに取り組み,内部模様および微細模様の輪郭のフラクタル次元をボックスカウンティング法およびピクセルカウンティング法で求めた.ボックスカウンティング法では音響インピーダンスを20%, 50%, 80%を閾値として,フラクタル次元Dを求めた.ピクセルカウンティング法ではグレースケール画像に対して閾値を変化させて2値画像を作成し,各々の画像の閾値以上の画素数を数える.閾値を順次変化させて2値画像を作成し,各々の画像の閾値以上の画素数(N)をカウントする.ln(N)を縦軸に,閾値を変化させる時の下限値を基準にした相対的な濃度値の変化量を横軸にしてグラフを作成.このグラフの傾きを最小二乗法で求めた.
【結果】
ボックスカウンティング法による50%閾値でのフラクタル次元は正常甲状腺内部1.57+/-0.25,輪郭1.31+/-0.28であった.内部次元は20%閾値で1.66+/-0.26と上昇し,80%閾値では0,86+/-0.26と低下した.内部次元はすべての甲状腺疾患で低下しており,50%閾値でのフラクタル次元は橋本病(腺腫あり)が1.24+/-0.24と最も低値となった.輪郭のフラクタル次元も甲状腺疾患で低下しており,内部次元と同様に橋本病(腺腫あり)で1.196+/-0.241であった.ピクセルカウンティング法では正常甲状腺のフラクタル次元は0.080+/-0.028であったが,亜急性甲状腺炎では0.084+/-0.109とやや上昇していた.バセドウ病では次元が低下する傾向があったが,病気により大きく変化した.
【結語】
2次元画像内部の複雑さを反映するフラクタル次元は疾患すべてで低下し腺腫を合併するとさらに低下した.次元の低下は甲状腺組織破壊の程度,ダメージを反映しているものと思われた.内部の不均一さ,粗さ,画像の濃淡などで主観的に評価されることが多く,フラクタル次元によりダメージを定量的に評価できる可能性が示唆された