櫻井 健一, 安達 慶太, 窪田 仁美, 鈴木 佑奈, 武井 咲月, 鈴木 周平, 原 由起子, 榎本 克久, 平野 智寛, 藤崎 滋

Kenichi SAKURAI, Keita ADACHI, Hitomi KUBOTA, Yuna SUZUKI, Satsuki TAKEI, Shuhei SUZUKI, Yukiko HARA, Katsuhisa ENOMOTO, Tomohiro HIRANO, Shigeru FUJISAKI

¹日本大学・医学部外科学系・乳腺内分泌外科学分野, ²医療法人社団・藤崎病院外科

¹Department of Breast and Endocrine Surgery, Nihon University School of Medicine, ²Department of Surgery, Fujisaki Hospital

キーワード :

【背景】
乳房再建術が保険適応となり，再建術を念頭においた乳癌手術が求められるようになった．根治性を保ち，再建手術時の合併症を低減させる整容性の高い乳癌手術が検討されている．
【目的】
外側側方切開による内視鏡補助下乳頭乳輪温存胸筋温存乳房切除術の有用性について検討する．
【対象】
過去2年間に当科で経験した術前未治療の原発性乳癌のうち，超音波検査で大胸筋浸潤を認めず，腫瘍が乳頭から1.5cm以上離れており，腫瘍が腫瘍直上の皮膚から1cm以上離れている症例を本術式の適応とし，本術式を施行した原発性乳癌64例を対象とした．
【方法】
対象症例について針生検による診断，術前画像診断，手術時間，出血量，摘出標本の切除断端，平均入院日数，再手術の有無，術後の乳房再建希望率，乳房再建時の整容性，局所再発の有無についてretorospectiveに検討を行った．統計学的検定には多変量分散分析法を用い，p＜0.05を有意差ありと判定した．
【結果】
対象症例の全例が女性．平均年齢56.2歳．皮膚から腫瘍直上までの平均距離1.2cm．平均手術時間84.5分，平均出血量17.8ml，2例のみ切除断端（皮膚側）陽性で再手術が施行されていた（3.1％）．これらの数値は同時期に経験した正面アプローチによる胸筋温存乳房切除術と比較して差を認めなかった．平均観察期間1.6年で局所再発症例は認めていない．
【結語】
外側側方切開による内視鏡補助下乳頭乳輪温存胸筋温存乳房切除術は手術時間・出血量・根治性において従来の術式と遜色なかった．また，本術式の適応に超音波検査は有用であった．