鈴木 佑奈, 櫻井 健一, 安達 慶太, 窪田 仁美, 鈴木 周平, 原 由起子, 榎本 克久, 平野 智寛, 武井 咲月, 藤崎 滋

Yuna SUZUKI, Kenichi SAKURAI, Keita ADACHI, Hitomi KUBOTA, Shuhei SUZUKI, Yukiko HARA, Katsuhisa ENOMOTO, Tomohiro HIRANO, Satsuki TAKEI, Shigeru FUJISAKI

¹日本大学・医学部外科学系・乳腺内分泌外科学分野, ²医療法人社団藤崎病院外科

¹Division of Breast and Endocrine Surgery, Department of Surgery, Nihon University School of Medicine, ²Fujisaki Hospital

キーワード :

　乳房再建手術の保険適応以来，根治性と整容性を両立させた乳癌手術術式の選択肢が増えている．今回われわれは，従来の超音波検査機器で乳頭乳輪温存が難しいと診断された症例に対して全自動乳房超音波診断装置で乳頭側への進展程度を正確に診断し，乳頭乳輪温存手術が施行できた症例を経験したので報告する．
　症例は52歳，女性．対策型乳癌検診で異常を指摘され，2次検診目的に当科を受診した．マンモグラフィ検査では左乳房に構築の弥乱れを認めた．Hand held typeの超音波検査では左CD領域に直径11mmの境界不明瞭な不整形低エコー腫瘤と乳頭直下まで連続する充実成分を伴う拡張乳管を認めた．針生検では浸潤性乳管癌の診断．乳頭乳輪温存手術希望が強いため，全自動乳房超音波診断装置（ABUS:GE社製）を施行したところ，乳頭直下までの拡張乳管はみとめなかった．他臓器に転移がないことを確認後，内視鏡補助下乳頭乳輪温存胸筋温存乳房切除術+センチネルリンパ節生検術を施行．術中迅速診断でセンチネルリンパ節，乳頭直下，腫瘍直上に癌が存在しないことを確認し，手術を終了した．病理組織検査の結果，すべての切除断端は陰性であった．
　乳頭直下への乳管内進展を判断し，術式を決定する上で，全自動乳房超音波診断装置は有用であった．