安達 慶太, 鈴木 周平, 鈴木 佑奈, 武井 咲月, 窪田 仁美, 原 由起子, 櫻井 健一

Keita ADACHI, Shuhei SUZUKI, Yuna SUZUKI, Satsuki TAKEI, Hitomi KUBOTA, Yukiko HARA, Kenichi SAKURAI

日本大学医学部外科学系乳腺内分泌外科学分野

Breast and Endocrine Surgery, Nihon University

キーワード :

乳腺症経過観察中に乳房用自動超音波画像診断装置にて発見された乳癌の1例を経験したので報告する．
症例は50歳，女性．8年前より乳腺症にて年に1度定期的に経過観察されていた．フォローアップ目的に施行した乳房用自動超音波画像診断装置（Invenia ABUS:GE社製）にて右乳房C領域に境界不明瞭な不整形低エコー腫瘤を指摘された．従来型のハンドヘルド超音波検査（HHUS）を追加施行したところ，同部位に12×9×7mmの境界不明瞭な不整形低エコー腫瘤として描出された．腫瘤の内部に点状高エコーを有し，豊富なバスキュラリティ，拍動波を認めた．エラストグラフィではつくば弾性スコア5を呈していた．また，前方境界線は断裂し，境界部高エコー像を認め，カテゴリー5と判定した．マンモグラフィ検査で右乳房MO領域にspiculated massの出現を認めていた．腫瘤に対し吸引式組織生検を施行し，ductal carcinoma（ER+，PgR+，HER2:0，Ki-67:5％）の診断であった．全身検索にて有意なリンパ節腫大や遠隔転移は認めず，乳房部分切除術およびセンチネルリンパ節生検術を施行した．
本症例においてABUSが定期的なスクリーニングとして有用であった．しかしながら，ABUSではカラードップラ法やエラストグラフィの評価は困難であり，所見を認めた場合には従来型のHHUSによる動的検査を追加し，腫瘤の良悪性判定を行う必要があると考えらえた．